第32話
「私が来た!」
アークライトの姉であるリューズは一時幼き頃のアークライトが癖のように話していた言葉と共にリーミャたち三人が入っているお風呂へと入ってきた。
「みんなしっかりとお風呂に入れているようね……このお風呂はアークライトのお気に入りだから、何かあったら困るのよね。アークライトが拗ねたら面倒なのよ」
互いの体をバスタオルで隠しているリーミャたちとは違い、リューズはバスタオルなどでは一切隠さない……完全フルオープンで己の体を見せていた。
元よりこのお風呂が四人用で作られているのか、新しくリューズが入ってきても問題ないくらいの広さがあった。
リューズは体を軽くお湯で流した後、湯舟へと使って体を洗っている三人の方へと視線を向ける。
「あー、えっと……アークライトのお姉さん」
名前がわからなかったリーミャはいきなり現れたリューズをなんて呼べばいいかわからず、言葉を詰まらせてしまう。
「リューズよ……お義姉ちゃんって呼んでくれても良いけど」
三人の言葉に対してリューズは冗談交じりにそう答える。
「……やっぱり姉弟なんですね。真顔で冗談を言うところとかそっくりじゃないですか」
「ふふふ」
ジト目でリューズに向かってそう話すリーミャを前にリューズは心底楽しそうに笑って見せる。
先ほどまで浮かべていた無表情を消し、笑みを浮かべて見せる。
アークライトは笑わない。
何があっても、どんな冗談を口に出したとしても……決して笑わない。
しかし、姉であるリューズも同様というわけではない。
「……ぇ?」
「知っているかしら?真顔で話した方が面白くなる時もあるのよ。あなたのその顔が見れたのであれば私が不肖の弟の真似をした甲斐があったわね」
「……不肖」
リーミャが少しだけ不機嫌そうにぼそりと呟きながらも……すぐに表情を変え、リューズへと視線を向ける。
「それで?リューズさんは私たちに何の用でしょうか?」
「そんなに警戒しなくて良いのよ……?というか、私ってばアークライトのお姉ちゃんよ?あの子の不利益になることをするわけないじゃない。ここに押しかけてきた理由はただ一つ」
「それは……?」
「興味よ」
リューズの答え。
それは非常に簡潔なものであった。
「うちの弟の彼女となる可能性がある子よ?そんな興味が湧くに決まっているじゃない。初めてなのよ?あの子が家に女の子を呼ぶの」
「「「なッ!!!」」」
リューズの前にいる三者が三様の感情でもって驚きを見せる。
「ねぇねぇ……実際のところ、みんなはアークライトのこと好き?あの子の見た目は抜群に良いからどんな女の子もコロッと好きになっちゃうかなって思っているんだけど……」
そんな三人を見て心底楽しそうなリューズは口を開き、率直に疑問を豪速球で投げつけた。
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