第28話

 ダンジョン20階層よりさらに進み、24階層。


「危ない」


「ぐぇ!?」

 

 なんとなくの勘。

 それに従い僕は自分の目の前を歩いているアリスの首根っこを掴んで止める。


「ちょ!?いきなり何するの!?喧嘩……は無理そうだから、賠償金を──」


「ほい!」

 

 僕はポケットの中に入っていたゴミを前方に投げつける。

 

「みーつけた」

 

 僕の投げたゴミは空中を走り抜ける過程でぶつかって止まる。

 すぐさま大地を蹴り、抜刀。

 

「逝ったか?」

 

 僕は確かな感触が得られた刀を鞘へと納刀する。


「……ぁ」

 

 どこからか、小さな男の声が聞こえると共に僕のすぐ目の前に血を流して倒れる男が現れる。

 ……?人間なのか、こいつ。


「アイ。こいつ、見たことある?」

 

 僕はちょっとだけ離れたところに立っているアイの方へと視線を送り、尋ねる。


「……ふぇ?」


「はい?」 

「……?」


 だが、アイどころか、リーミャもアリスも、僕以外の全員が驚いて、呆然としており……答えが得られるような状況ではなさそうだった。

 意識低いよ。

 ちょっと敵にエンカして、僕が殺しただけじゃん。


 ■■■■■

 

 三人が混乱から脱するのにそこそこの時間がかかってしまった。


「ダンジョン内で姿隠して近づいてきた奴とか間違いなく曲者だろ。どう考えても正当防衛。以前、アイを追っていた奴も透明化能力持っていたし。それで?アイは本当にこいつの見覚えはない?」


「す、すみません……普通に知らないです。こんな人は見たことがないです。ですが、基本的に私がいた人間牧場の管理者は仮面をつけていましたので……もしかしたらその管理者の一人にこいつがいたのかもしれないです」


「待って?私がいた人間牧場って何?」


「アリス、ステイ……もしかしてだけど、その牧場を運営しているの人間だったりしない?だとしたら結構面倒なことになりそうだけど」

 

 僕は頭の中にとある組織のことをおもい浮かべながら

 確かゲームの中に完璧な生命体を作り出すことを目指してダンジョン内で人体実験を繰り返していた組織がいたはずだ。


「……どうでしょうか。正直に言ってわかりかねるのですが、それでも管理していた人たちは全員人型でしたよ。全員素肌を隠しているので何とも言えないのですが」


「まぁ、人型の魔物も多いし、それだけじゃわからないか」

 

「はい……」

 

 僕の言葉にアイが頷く。

 でも、一旦暫定的にゲームに出てきた組織が敵であると仮定して動こうかな。


「とりあえず、だ。これから三人とも僕の家で暮らして」


「「「へ?」」」


「……何を驚いているの?敵が人間である可能性が以上、地上でも安全なんてない。戦闘能力がない君たちをそのままにしておくことなんて出来ないでしょ」

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