第27話

 ダンジョン20階層。

 所謂ボス階層と言われ、広い階層にボスがいるだけの階層。

 僕の前には巨大な両手斧を持ったミノタウロスが立っていた。


「バフ、デバフお願い」


「了解です!」

 

 アイは魔物の姿を開放し、バフとデバフを巻き始める。

 将来、アイに着けさせる予定の呪術師の職業は相手にデバフを巻き、味方にシールドを貼ったり、バフをかけたり、回復出来たりする職業なのだが、まだ彼女は弓士なので、そんなたくさんの能力を持っていない。


「あ、私も一応バフをかけておくわね」


「ん。ありがと」

 

 最上位職に転職し、昴流となったリーミャが美しい舞を披露し、僕のステータスを上げてくれる。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 ミノタウロスが空間を震わせるほどの咆哮を響かせ……僕は地面を蹴る。


「秘剣・乱れ堕龍」

 

 抜刀と同時に僕は跳躍し、ミノタロウスの振るう斧を回避して刀を振り下ろす。

 

 一打。

 

 返す刀で斬りあげ、再度跳躍。

 

 二打。

 

 天へと打ちあがった僕は刀を構える。


「紅蓮解放」

 

 僕の手に握られている刀に紅蓮が灯る。


「三打」

 

 紅蓮に染まった刀をミノタウロスへと振り下ろす。


「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああッ!!!」

 

 刀より溢れ出た紅蓮は地獄の業火となってミノタウロスの体を燃やし尽くし、ミノタウロスの汚い悲鳴がダンジョン内に響き渡る。


「HP減少は一割と3000ダメージ。全然減ってない……やっぱ防御無視は頭おかしいな」

 

 ミノタウロスをこのレベルで解放スキルである『紅蓮』も使ったスキル『秘剣・乱れ堕龍』一発で消し飛ばせるとかまぁまぁ頭おかしい。

 うちのパーティーメンバーのバフとデバフは他パーティーと比べても圧倒的だろう。


「あわわ……一撃だぁ、一撃だぁ……化け物だァ」

 

 あっさりとミノタウロスを倒した僕を見て


「まぁ、予想出来ていたことだけど……相変わらずおかしいわよね、火力」


「ですです」

 

 アリスの化け物扱いにリーミャもアイも首を縦に振って同意する。


「アイのバフの方がよっぽどぶっ壊れているけどね?」


「わ、私ですか!?」


「うん。確実に君のバフがなければ確実に一発で倒せてないよ」


「……私も一応バフ撒いているんだけど」

 

 アイのバフをべた褒めしている僕に対してリーミャが若干頬を膨らませて不満を口にする。


「いやぁ、防御無視付与はレベチなんだよ。当然リーミャのバフも強いし、速度強化とか敵の攻撃に当たらないことを前提としている僕の生命線ではあるんだけど」


「ごめん。不満とか何もかもが吹き飛んだ。全部避けること前提って何?そんな前提にあったの?」

 

 急に真顔へと戻ったリーミャが呆然と声を漏らした。

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