第26話
「あそこで言っていたことが本当のことだと誰が思えるの……?」
ギルド内に存在する修練場。
そこで己の体に流れる魔物の血を披露したアイを前に、僕たちが教会から借りてきた人員であるアリスが呆然とつぶやく。
「なんかすみません」
そのアリスの驚きを前にアイが頭を下げて謝罪する。
「あ、いや、うん。謝罪はしなくて良いのよ……?ってあれ?これも本当だったってことは……HP全損も」
「本当のことよ。うちのリーダーであるアークライトは羅刹。普通にHPを全損させているわ」
「へ?」
「……一回HP管理ミスって全損しちゃっただけじゃん」
僕の黒歴史を掘り繰り返さないでほしい。
「しているのッ!?!?」
僕の言葉にアリスが驚愕する。
「驚くわよね」
「……人間牧場出身の私でもありえないってわかりますよ」
アリスの驚愕に他の二人も頷く。
「狂人じゃない!?えぇぇぇぇえええええええええ!?」
驚きすぎじゃない?
魔物の姿になれるアイよりも驚かれるの?
「あら?知らないの?アークライトの二つ名は紫紺ノ狂人。まごうことなき狂人で、冒険者たちは全員近寄ってはならない狂人として扱っているわよ?」
「紫紺ノ狂人ッ!?彼がッ!?」
アリスが驚愕し、僕の方に視線を向ける。
「めちゃくそ美しい彼がッ!?私、紫紺ノ狂人は人を殺していそうな瞳をぎらつかせる強面の大男って聞いているけど!?体中に傷跡が残っているどころか……シミ一つないきれいな素肌じゃないですか!?」
「えぇ、そうよ……紫紺ノ狂人とは彼のこと。恐ろしい形相の化け物ではないわ。アークライトの見た目に絆されたら最後、狂人の餌食よ」
「……え?僕ってばそんな風に言われているの?」
紫紺ノ狂人。
僕は初めて聞く自分の二つ名に驚愕する……狂人扱いなの?僕ってばひどくない?
そして、また聞きの僕の姿おかしくない?大男って、僕は平均身長よりもはるかに小さく、初見で僕の年齢を当たられる人はいないと言うのに……。
というかリーミャ。
狂人の餌食って何?僕は何もしないよ?
「わ、私はアークライトさんのストイックなところ……こう、ちょっと頭のねじが飛んじゃっているのかな?って思うときもありますけど、とてもそこはかとなく良いと思います!」
「アイさんや、それは僕のフォローになっていないどころか、若干刺しに来ているよね?」
「ふぇぇ!?そ、そんなつもりじゃ……ッ!ご、ごめんなさい!」
「いや、謝る必要はないわ」
「事実だろうからね」
アイの謝罪に対して、物知り顔のリーミャとアリスが口を開く。
「うん。謝らなくても良いけど……それを君たちが言う?」
僕は二人の態度に不満を覚え、頬を膨らませた。
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