第25話
どこの地域で発祥したのかもわからない宗教、『オーヘンス教』の教会で。
「いやはや……すみません。うちのシスターが騒がしく……」
僕とリーミャはその教会の神父を勤めておられる老年の男性、ロキさんに歓待を受けていた。
「むーッ、むーッ、むーッ!!!」
僕たちがいるのは教会内にある応接室。
建物の外見はダンジョン12階層にあってもおかしくなさそうなものではあったものの、内装はダンジョン12階層にあったら違和感を覚えるほどにはきれいないものだった。
ちなみに僕が教会に入ると同時に飛んできて受けとめた少女はロキさんの手によって縛らえ、床に転がされている。
「それで?私どものような弱小宗教に何の用でしょうか……?正直に言ってまったくもって目的が理解出来ないのですが……」
「ここでお布施だの、信者になりたいなど言っても信じてもらえないであろうので、単刀直入に言いますね。冒険者と教会の間に存在する僧侶協力制度を知っていますか?」
「……なるほど。あなた方は冒険者でしたか」
僕の言葉にロキさんは納得が言ったように頷く。
「ですが、見てわかるように我々は弱小。聖職者どころかレベルの高い僧侶もいないような状況でして……」
「そこらへんは問題ありません。レベルを上げさせるだけですので」
「なるほど……そうですな。我々としてもその制度による恩恵も大きく、是非にと頷きたいところではあるのですが……うちにいるそこのおてんば娘くらいなものでしてな……」
「あぁ、そこらへんならば問題ないと思いますよ。うちのパーティーには頭がおかしいんじゃないかと思うような人しかいませんので……私以外」
ロキさんの言葉に対してリーミャが僕のことを見ながらそう答える。
……ふむ。僕が頭おかしいとでも……?自覚はあるけども。前世の感覚を引きずっている僕はどう考えてもこの世界の感覚とは合わないであろう……。
HPを過剰に大切にする感覚がまったくわからん。
「笑顔で自身のHPを全損させたり、魔物になったりでもしない限り、構いませんよ」
「い、いえ……あの子はそこまでぶっ飛んでいませんが……」
リーミャの答えにロキさんは困惑したような表情を浮かべながら口を開く。
「それなら問題ありません」
「あの子の素行はかなり悪い方です……恥ずかしながら教育がうまく行っているとは言えなく……それでも良ければ……」
「はい。それで文句ありません。当然、彼女によってもし何らかの被害をこちらが被ることになってもあなたたち教会に損害を要求するような真似は致しません」
「それは助かります……ぜひよろしくお願いします」
途中から。
交渉役が僕からリーミャに変わるというアクシデントもあったが、教会との交渉は文句なしの結果に終わった。
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