第22話

「ひどい……本当にひどいですぅ……」

 

 蟻の巣を掃討し、リーミャをレベル30にまで上げたダンジョンから地上へと帰還する帰り道。

 アイが頬を膨らませて、文句を垂れる。


「そうだよね。うん。あいつ、頭おかしいよね。逝っちゃっているいるよね、頭」


 そんなアイの文句にリーミャが同意し、僕への不満を口にする。


「……ひどくない?ちゃんと安全マージンはとっていたよ?というか、蟻くらい簡単に僕が殲滅できるし、安全だよ?」


「そういうことじゃないんですけどぉ……というか、あれはなんです?なんで刀を振り下ろして、目の前の蟻すべてが殲滅するんですか?前方10mくらい軽く消し飛ばしてましたよね?」


「そういうスキル」


「羅刹にはそんな反則みたいなスキルあるんですね……」


「火力という一点においては羅刹は反則レベルだからね。まぁ、その代わりHPはゴリゴリ削れていくんだけど」

 

 少しでもHP管理ミスったらスキル回しだけでHPが吹き飛ぶ。

 回復してくれるパーティーメンバーが居ない中僕もよく羅刹で頑張っているものだ。


「……HPってそんなに軽いものでしたっけ?」


「諦めな。この子はこういう子よ……もう少しで良いからHPを大切にしてほしいんだけどね……」

 

「あはは。それは無理な相談だよ。僕は羅刹だよ?」


「……普通は羅刹でもHPを大切にするよ?」


「え?僕以外にも羅刹っているの?」

 

 この世界の人間はちょっとびっくりするくらいHPを大切に扱っている。

 そんな世界で僕以外に羅刹になる人がいるのだろうか?

 最大火力を出そうとすればHPの4分の3くらい余裕で消し飛ぶけど……。


「……少なくとも私は知らないわ」


「だよねー」


 僕はリーミャの言葉に頷く。


「……この人頭おかしいんですか!?」


「何を今更」


「二人してひどくない……?HPがなきゃ死ぬってのはわかるんだけど……でも当たらなきゃ良いだけだしな。HPがなくなっても」

 

 前世の僕は当然HPなんてないし、今生も生まれたばかりのころはHPがなかった。

 それ故に僕の中でHPを大切にするという意識が全くもって存在していなかった。


「まぁ、価値観の違いだよ。僕にとってそんなに…HPは大切じゃないんだよ」


「意味分かんない……」


「意味がわからないです……」


 人間牧場出身の魔物とのハーフの子からも意味がわからないと言われるのもだいぶ癪なんだけど。

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