第21話

「ふわぁ……」

 

 僕は大きなあくびを浮かべ、ブルーシートで身を隠したまま蔦をうまく使った魔物と戦うアイを眺める。

 彼女に危険が迫った際……すぐに対処出来るように備えたまま。

 

 ここはダンジョン5階層。

 初心者がレベル上げをするのに持ってこいの階層。

 この階層をうろついている蟻どもは阿保みたいに数が多く、そこそこの量の経験値を残してくれるため、かなり素晴らしい経験値稼ぎになる。

 

 蟻は防御力が高く厄介であるが、それはアイの撒くバフのおかげで障壁足りえない。

 彼女の与えてくれるバフである防御無視10%はあまりにも破格すぎる性能である。

 人権装備と言われた廃課金者だけが手に入れられる装備でさえ防御無視は3%しかもらえなかったし、結構やりこんでいる僕のキャラが全力で防御無視を積んでようやく10%。

 廃課金者の全力にたった一つのバフで追いつけてしまう彼女のチートたるや。

 エゲツない。

 

「これで最後です!」

 

 蔦が最後の一匹となった蟻を叩き潰す。


「ナイスー」

 

 僕は戦いを終えたアイにねぎらいの言葉を投げかける。


「レベルはどれくらい上がった」


「?えっと今、16ですね!」

 

 アイの現在の職業は補士。

 最終的に彼女には呪術師になってもらう予定で、今は彼女のレベル上げ中。

 出来れば今日中にマックスである30レベルにまで上げてしまいたい。

 

「よし!じゃあ、次は巣の方へとカチコミに行こうか。たとえ何があっても僕がいるから問題はない……安心してくれていいよ」


 だからこそ、もっと蟻がたくさんいる場所、蟻の巣の方へと狩場を移すべきだろう。

 

「はい!わかりました!行きましょう!今の私なら何が相手でも負ける気がしません!」

 

 僕の言葉にアイは元気よく頷き、ふんすと息を巻き、やる気を漲らせている。

 うんうん。

 実に素晴らしい……最高じゃないか。


「……あぁ。可哀そうに……悪魔に騙されて……」

 

 そんなアイを僕の隣で眺めていた

 ちょっと悪魔とは何か、悪魔とは。僕は出来るだけ早くアイが強くなれるように協力しているだけだと言うのに。


 ■■■■■


 ダンジョン5階層に。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!多いですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううううううううううう!!!」

 

 アイの大きな悲鳴が響き渡った。

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