第16話
「行ってくる」
僕は結界魔法を発動できる魔道具をリーミャに渡した後、疾走。
悲鳴が聞こえてきた方向へとその足を向ける。
「邪魔だよ」
立ちふさがる魔物、アンデットを一刀の元に断ち切り、30秒足らずで悲鳴が聞こえてきた場所へとたどり着く。
「大丈夫?」
その場に一人、ダンジョンに裸で転がっていた少女に僕は話しかける。
「……ん?」
いや、なんでダンジョンに裸で少女が転がっているの?自殺志願者?
……12層の魔物に服を剥ぐ奴なんて言ったけ?12層は死者への冒涜がテーマになっている階層で正者への冒涜はなかったと思ったのだけど……。
「助けてッ!?」
腰にまで伸びたきれいな銀髪に赤と青のオッドアイを持った何故か裸姿の少女は僕に縋ってくる。
「まぁ、良いけど……何かッ!?!?」
誰も居なかった。
そのはずの場所から僕はなんとなくの感で己に迫ってきている危機を察知して刀を抜く。
キンッ
剣劇音がダンジョンに木霊し、火花が散る。
「シッ!」
なんとなく感じる空気の揺れ……それに向けて解き放った僕の刀に何かしらを斬った感触が残り、血しぶきが上がる。
そこにいる何者かの姿は見えない。
しかし、血は見ることが出来る。
「死ね」
羅刹のスキルを発動させ、刀を振り下ろす。
刀からあふれる圧倒的な火力を持つ力の濁流は『何か』を完全に───。
「……ちっ」
確実に当たった……だが、殺しきれなかった。
どういう原理なのかはわからないが姿はなく、血も見えなくなってしまっているが、まだそこにいることは理解出来た。
僕はHPポーションを取り出して口に流し込み、跳躍。
地面に向かってさっき拾った土を投げつける。
ただのステータス任せの砂利投げであるが、砂利の一粒一粒が一般人のHPを全損させるほどの運動量を持つ砂利投げは確実にダメージを与え、姿の見えない存在の姿を映し出す。
「そこか」
僕は全力でそこに向かった刀を投げつけるが……当たるあと一歩のところでそいつの何もかもがなくなる。
なんとなく感じていた危機感も、空気の揺れもなくなっている。
この場から姿の見えない存在が消えたと断言できた。
「ごめん、逃がした」
僕は裸の少女の隣へと着地し、結局姿を見ることが出来なかった何かを逃がしたことを詫びる。
「……う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
何故か。
「ちょ!?」
急に大粒の涙を流し、またもや縋りついた裸の少女に僕は困惑する。
「……さいてー」
僕が泣いている裸の少女に抱き着かれたちょうどそのタイミングで僕のもとに追いついてきたリーミャはびっくりするくらい冷たい声を発した。
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