第11話
僕が以前助けた少女であり、僕をダンジョンにまで連れて行ってくれる少女……リーミャと共に僕はダンジョンへと入る。
「ほ、本当にその装備でダンジョンに行くのね……」
リーミャは腰に刀をぶら下げた以外はほぼ私服状態の僕を見てつぶやく。
「うん……いつもはリュックを背負っているんだけど、今日はレベル上げしたいから持ってきていないかな」
「れ、レベル上げのため……そ、そういうこともあるよね。うん……うん。そ、それでさ。なんで防具してないの?した方がよくない?」
「いやぁ……鎧なんかあっても邪魔なだけじゃん。動き鈍くなる方が嫌なんだよね。僕としては」
「えぇ……動きが鈍くなる……?」
僕の答えを聞いたリーミャが引いたような声を漏らす。
そんなにおかしいかな……?鎧とか着こんでも動きが阻害されるだけなんだよね。
「それに防具って言われても、どんな攻撃でも防いでくれるHPがあるじゃん。こいつがあるのにわざわざ別途で防御手段を持っておく必要ある?」
「えぇ!?HPを防御手段!?少しでもHPが削れないようにしないと!全損して、気絶するような激痛を負ったらどうするの!?」
「……激痛?」
僕はリーミャの言葉に首をかしげる。
HPを全損したときに感じる痛みなどせいぜい小指をタンスの角にぶつけたくらいで……激痛ではあるものの気絶するようなものではないだろう。
「え……?もしかしてピンと来てない?」
「来てない。ちょいちょち全損しているけど、そんなことなかったよ?痛いなぁ……っていうくらい」
「痛いなぁッ!?……って!?はぁぁぁぁ!?全損したことがある!?」
僕の言葉を聞いたリーミャが大げさに驚く。
「ちょっと驚きすぎじゃない?」
「驚くわよ!?当たり前じゃない!?……ちょっと何を言っているの?HPを全損した人間なんて歴史上を見て……あなたに全損された人か、戦争で殺された人くらいなものよ!」
「まぁ……戦争では全損するし」
「戦争とダンジョン探索を一緒にしないで!?そんな命知らずな……ダンジョン探索は死なないよう……死なないように……安全に安全を考えて潜るのよ?……ここで気絶した人間の末路なんて悲惨なんだから」
「へぇ……そうなんだ」
僕はリーミャの言葉に頷く。
「まぁ……考え方の違いかな」
「考え方の違いで済む問題じゃない……ほんとに」
ダンジョンでも、戦場でも……日常生活でも死ぬときは死ぬのだ。
気にする必要はないだろう。
「じゃあ……僕はこの辺で。ダンジョンに連れてきてくれてありがとね」
「え……?私もついていきますよ?」
「え……?ダンジョンに入った後もついてくるの?」
「当たり前じゃん!?何のための制度なの!?」
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