第9話

 この街の領主が僕たち姉弟に下した死刑宣告を前に。


「あ、あ、あ、あのッ!!!」

 

 僕がここで領主をとっ捕まえ、お姉ちゃんを確保してから……領主を人質としてお金を奪ってから他国にトンズラすることを本気で計画し、実行しようとしたとき。

 とある少女が僕に話しかけてきた。


「……あぁ、あのときの少女さんですか。あの後は大丈夫でしたか?」

 

 僕に話しかけてきた少女……昨日、男たちに体を掴まれ、裏路地に引きずり込まれていた少女の姿を見た僕は口を開き、昨日どうなったかを尋ねる。

 領主の動向に目を光らせておくことも忘れない……彼を逃がすわけにはいかないのだから。


「えっ……あ、はい。大丈夫です」

 

 僕の言葉に少女は頷く。


「それなら良かったです……それで?一体何の用でしょうか?少々こちらは立て込んでいるのですが……」

 

 領主に逃げられでもしたらゲームオーバーだ。

 さっさと拘束してしまいたいのだけど……。


「あぁ!そうです!……あ、あの……良かったら、私と一緒に潜ります、か?」


「え?」

 

 僕は目の前の少女の言葉に驚き、呆然と声を漏らす。


「先程の話を聞いていたところ……一緒に潜ってくれる冒険者を探していたんですよね?私は先月16歳になったばかりの冒険者で、あなたをダンジョンに連れていく規定を満たしていると思うの。つい最近私もソロの冒険者になったから気を使うパーティーメンバーも居ないの」


「あ、あぁ。そうだ。君が居れば問題ないとも」

 

 少女の言葉に領主は頷き、太鼓判を押す。


「許されるのであれば、お願いしたいです」


「それじゃあ、決まりですね!


 良かった……どうやら僕は犯罪者にならなくてすみそうだ。

 何故かわからないけど僕を避けていく冒険者たちの中、話しかけてくれたこの少女には頭が上がらない。


「ということになりました。領主様……先程までの不敬な態度、申し訳ございませんでした。こちら側の事情も汲み、今回の私の不敬な態度は水に流してもらえると嬉しいのですが……」

 

 危険な行為であるということを認知しつつも、


「あ、あぁ……もちろんだとも。君に頼もしい味方が出来てくれたようで良かった……」


「はい。そうですね」


 今回のことで領主様を、特権階級である貴族を相手にしてしまったかもしれない。色々と気を引き締めないといけないかな。


「これからの君の人生に幸があることを祈ってるとも」


「領主様の寛大な態度に感謝いたします」

 

 僕は笑みを浮かべ、席から立ち上がった。

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