第8話

 いつもどおりダンジョンの中へと入ろうとしたとき。


「ちょ、ちょ、ちょ……ちょっと良いかなぁ?」

 

 禿げてデブな脂ギッシュ中年が僕の方に話しかけてきた。

 ……ちょっと汗かきすぎじゃない?額からダラダラと汗を流している。まだ夏じゃないよ?


「えっと……何でしょうか?」

 

 何の用か……困惑しつつもそちらへと視線を向け、口を開ける。


「そ、そうですね……少し前の議題で、ですね。ダンジョン入場の年齢制限が話題に上がりまして」


「ん……?」


 僕は目の前の男の口から出る発言……それを前に嫌な予感を覚える。


「ダンジョン入場に必要な年齢……それが15歳と決められまして、その……アークライト殿のダンジョン入場を認める訳には……」


「は?」

 

 僕はその発言に驚愕し、呆然と声を漏らした。

 

 ■■■■■

 

「認められるわけ無いでしょうか!?僕たち兄弟に死ねって言っているんですか!?僕のことを考えたって……ッ!ありがた迷惑ですよ!」

 

 冒険者ギルドに置かれている机の一つで。

 僕はこの街を治めている領主を相手に詰め寄り、啖呵を切る。

 ダンジョンに潜れない。

 それすなわち僕の仕事がなくなることを意味し、それすなわち僕とお姉ちゃんの死を意味する。

 その人のためとかほざいて、仕事を奪いに来るとか正気の沙汰ではない。

 殺しに来ている。


「そ、そんなことを言われましても……」


「こっちのセリフだよッ!!!ァ!?なんだ、オイッ!?犯罪者にでも落ちろって言うのか!?ァ!?」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

 

 僕の言葉を受けて目の前にいる領主は悲鳴を上げる。

 これくらいで悲鳴を上げるくらいに怯えるのであればなんでそんなルールを通したというのか。

 僕は本気で裏組織に入ることを覚悟しながら僕は口を開く。

 目が見えないお姉ちゃんに仕事は難しいし、12歳である僕が働ける仕事も少ない。

 確実にお姉ちゃんを養えるほどのお金は稼げない。


「す、少しだけ待ってほしい……」

 

 領主はおずおずと口を開く。


「ぁ?」


「ひ、一つだけ例外がございます。15歳以上の方と一緒に入ることだけは例外として認められます。今回許されないのは……15歳未満の方がソロでダンジョンに入ることです」

 

 僕に向かって安心してくださいと言わんばかりにそう説明する領主……。


「無理じゃんッ!?」

 

 僕は絶望し、項垂れた。

 長年のぼっちを舐めるなよッ!?

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