第3話

 地下へ地下へと物理法則なんかガン無視で続いているダンジョン……その入り口の隣に建てられている冒険者たちを管理している冒険者ギルドの中へと僕は入る。

 冒険者ギルド内では様々な事務作業を行ってくれている受付嬢さんたちがあくせくと働き、多くの冒険者たちが冒険者ギルドに置かれているテーブルに座り、酒を片手に笑い合っている。

 そんな中、刀を一本腰にぶら下げただけで後はただの私服姿である僕の姿はいささか滑稽だろう。

 まぁ僕はランク5の冒険者で、この場にいる冒険者の中で最もランクの高い冒険者なのだけど。

 

 ちなみに冒険者はその強さや功績、ギルド内での評価を見てランクが定められている。

 1から始まり、一番高いのが10なのだけど、現在冒険者ランク10の冒険者はいないため、実質的に一番高いのがランク9だ。

 

「ふんふんふーん」

 

 何故か黙り込んでしまった冒険者たちの間を通り抜け、僕は魔晶石の買取を行っている受付嬢さんのもとに向かう。

 魔晶石。

 この世界における謎エネルギーの一つであり、これを加工することで魔道具を作れるらしい。

 実際に作ったり、作ったところを見たわけではないから実際のところはわからないけど。

 

「魔晶石の買取とHPポーションの販売をお願いします」

 

 冒険者ギルドの受付ではポーション類を始めとした多くのものを購入することが出来る。

 

「しょ、少々お、お待ちください……」

 

 受付嬢さんが僕の言葉に頷き、作業を始めてくれる。


「お待たせいたしました」


「ありがとう」

 

 僕は受付嬢さんから魔晶石のお金とHPポーションを受け取った僕はそれらをポシェットの中に仕舞い、背を向ける。

 普段パーティを組んで冒険に赴くことの多い冒険者たちと違って僕はソロであり……そして、僕はぼっち。

 冒険者の友達のいない僕はこれ以上冒険者ギルド内にいる意味もすることもないため、冒険者ギルドから出る。


「今日の夜ご飯は何かな……」

 

 既に日が傾き、夕暮れに彩られている空の下。

 僕は家で待っている姉が作っている夜ご飯のことを考えながら既に慣れ親しんだ夜の道を歩い……ん?

 僕は視界の端で一人の少女が強面の男たち三人に口を塞がれ、裏路地に引きずり込まれているのを発見する。


「見た以上、無視出来ないよね」

 

 僕はすぐさま気配を消してから大地を蹴って走り、裏路地へと入り込む。


「何をしているのかな?」

 

 あいにくと。

 一本道だった裏路地を少し進んだだけで多くの男たちに囲まれている少女のもとにたどり着く。


「……ァ?」

 

 目の前にいる男の数は30人くらいだろうか?

 今日戦ったファングウルフの三分の一。

 僕の武装は完璧で、HPポーションも持っていて……相手から強者の匂いは感じない。

 まぁ、負けることはないかな。


「返答次第じゃ……ちょっと黙っていられないかもよ」

 

 僕は腰から刀を抜き、男たちに笑みを向けた。

 

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