資料06

[予備知識・エンデナ大陸『ユム・ミリ氷雪地帯』]


 ユム・ミリ氷雪地帯は、南東でユム海、北西でミリ海と隣接する、エンデナ大陸では最も寒冷とされる地域。ナフナドカ、エミオン、フライア、ワルグゥの4つの国がある。ユム海に近い方が寒いとされ、ミリ海に近いナフナドカは、相対的には温暖な方。

 王国(ナフナドカ、ワルグゥ)と共和国(エミオン、フライア)の違いはあるが、この地域の4国は文化的(民族系統的)に近く、先住者の多くがニウア系だが、興味深いことに、4国のいずれもニウア語より、ユム・ミリと隣接する2大国であるレイジェ、キッカオンで普及している言語(シアルヌス語、ウェシッド語、シアドレンク語など)が理解されている傾向がある……

 冬は分厚い雪に埋もれ、夏には半分くらいまでむき出しになる、氷雪地帯全域に張り巡らされている〈石道せきどう〉と呼ばれている地下通路網は、4国の貿易のためにも重要……

 石道は、実はどこかの国の政府とかでなく、民間の有志が国家外地域に勝手に造りはじめ、それが現在までひたすら改良され続けているというもの。列車のための道や、特定の組織や個人が所有する道など、全て合わせると、かなり複雑な迷路みたいになっている……途中には多くの、休憩所と呼ばれる共同体エリアがあるが、今や普通に住民もいて、いくつかなど、ほとんど町(一応公式には、最も近い国に属している自治区ということになっている)のようになっている。

 この氷雪地帯の4国家の元の領土は、(空質くうしつを用いているのだろう)反重力装置で、通常は雪が最大に積もった場合の半分くらいの高さに浮かび、固定されている巨大円盤の上にある。そして円盤とその下の防衛用シールド設備(異分子センサーや、それが感知したものに対する様々な排除機能)のため、国家外と違って地下を実質利用できないから、国家内では移動手段としてスノーモービルやソリが一般的。


[予備知識・エンデナ大陸『レイジェ連邦』]

……

〈クリキズウェ〉


 レイジェにおいて、 国内外問わず、おそらく最も大きな影響力を持っている組織の1つ。

 レイジェの軍事組織は地方自警団から始まったものが多いとされているが、その説が正しいなら、この組織は完全に例外的。この組織は、WA2960の(この国における)二度めの政府崩壊事件の後、第二政府の生き残りが始めたものとされる(正確な目的は諸説あるが、自警などでないことは確か)。秘密結社クロバナに所属していたが、そのボスであり魔法の師であったヘズリィとの仲違いから、結社を抜けた魔女ファートデイナが合流してからは、その影響力を大きく強めた……



《レザフィカ球体旅行記》

author.クルックス・クルークス


──


[1・魔法とは何か]


……特定の集合をコントロールしたり、環境に適応させるため構造を組み替えたりできる自由性とか、自然生物の魔法とはそういうものだ……

……

……魔法は自然生物にしかない、"魂"という(自然生物としての)個々の存在を成り立たせる中核の要素が必須となる現象であり、機械生物には使えない。

……魔法は、自然生物の元素属性と、(魂系の)物理構造に関連した能力であり、原理的に自分と異なる属性の魔法は使えず、さらに個々の物理構造のための、機能性の限界がある。

 普通は"魔法適性"と呼ばれる、例えば機械生物を0、理論的に最も理想的な(とされる)精霊を1000とした"ミラー基準"で具体的な数値が示せる、言わば明確な才能があるのはそのため……

 精霊の場合、物質構造による制限はなく、必然的に魂の強さそのものが、魔法の強さ(魔法適性)である。物質構造を介さない分、制約が少ないが、逆に工夫がしにくく、機巧魔術と組み合わせることによる機能拡張が行いにくく、よって精霊の魔法は自然魔術にも使いにくい。

……

 魔法はまた、物質生物の場合は自身の物質構造を媒介とし、精霊の場合は直接的に、魂と繋げた(リンクさせた)物質を操作する能力。

 魂は自然生物の意識というものの源であり、そういう意味では、魔法とはつまり周囲の物質を擬似的に自身の一部にするというものと言ってもよい。自身の一部になっているからこそ意識的に操れる訳である。

 ただしここでも原理的な限界が見られる。操作する物質量が増えれば増えるほど、知能が処理しなければならない情報量は増えるだろうが、当然、(これもよく知られるように)知能にも、(つまりそれは意識に関連しているから)魂の強さ、物質構造が関連しているから、いくら魔法適性が高くても、必要な知能(というより情報処理のための容量)がなければ、対象物質群全てを満足に操ることはできない。


《魔法学》

author. レノアーデ、リメッタ


──


[第二部・自然生物]

……

[4・創造]


 自然生物の多くが、魔術師に創造されたものか、創造されたものの子たちということはよく知られている……

 "原型げんけい(プロトタイプ)"、すなわち魔術師が最初に造ったもの(根源的な型)、一般的には"始祖しそ"と呼ばれる誰かが、(創造者の意図にとっては)必ず完璧な存在となる。

 そして普通には、物理的構成要素の入れ替えや、その影響などによる魂の変化、世代交代の度のコピー精度のために、どうしても劣化していく(意図されていたものと本質的に違う存在になっていく)。

 外部からの干渉により、元の状態に戻していくこともできるが、原型の状態から少しでも変わってしまった場合、もう完璧に戻すことは絶対に不可能だと考えられている(99.9%戻っているものをさらに修復しようとしても、99.99%や99・999%になるだけなのだ。しかしもちろん精度は、おそらく無限に高められる)……

……

 魂の型(原型)はまた、自然生物の種族の定義に使える。前に述べたように、これは機械生物のどんな分類よりも明確なものである……

 種族ごとの魂と関連した型から外れすぎると、魂は上手く機能できなくなっていく。物理的機構との繋がり(リンク)がある間は、その崩壊に伴った苦しみを味わうが、リンクが極度に弱くなるかなくなると、感覚的にはただ意識だけがそこにあるような感じとなる。もちろん先に述べたように、魂が全く無事であるなら、型ごとの物理的構造だけを修復することで完全な復活をさせることも一応は可能。

……魂は、物理構造とか、周囲の自然との関連性による能力の限界を絶対的に定めるから、そういうものの調整可能自由度が高い機械生物と違って、魂の型ごとの種族間ではっきりとした生物学的順序付けができる。同種族内でも場合によって差が出る。例えば知的種族の場合、普通は男が女より優れる。しかし才能の絶対的違いはあるが、種族内でのたいていの差は努力でカバーできると思われる。

 もちろんそうした、自然生物間における優劣(とされている違い)は、原型からどれだけ違った存在であるか、というだけのことにすぎないことは、ここまでを読まれた読者にはもう言うまでもないことと思う……

……しかしかなり確実なことに魔法の強さの限界がある。ある自然生物の種族の、魔法の最大性能は、原型と関係している。簡単には、原型の者が最も強力な魔法を使える。ただし、原型から離れた者たちの魔法の強さが、原型にどのくらい近いかで決まるのは、すでに(あるいはまだ)かなり原型に近い者だけである。確かに珍しいことではあるのだが、原型からかなり離れているのに、偶然に魔法の大きな才を得る者もいる……もちろん(原型段階で調整されている)意図的なもの以外ではかなり珍しいが……

……

 原型は、どのようなテクノロジーでも変化させることが不可能とされる。また、普遍的な遺伝要素である"のろい"を有する。呪いとはいわば原型の時に決められたルールなのだが、それが崩壊した場合は、その自然生物は死ぬしかない(あるいは魂を失うしかない)……


《生物理論》

author. ヨッド・ヘンルト・スプゲジャ


──


[ヒト]

……

〈ウィッチ〉


 正確に言うとヒトなのだが、魔法のための構造が、意図的に本来以上に強くされている者は、ヒトの亜種ウィッチ扱いされることが普通。

 通常近しい構造なら、(魂の強さのために)男の方が魔法力が強くなるが、ウィッチは例外。ただし構造自体がやや単純な女の場合でしか、この類いの成功例がないというだけとも…… 


[キメラ]

……

〈リザードマン〉


 ヒトとトカゲのキメラ。

 フォルムにこそヒトの要素が見られるが、通常に比べるとかなり背中が曲がり気味で、細かな特徴的にはほぼ完全に、二足歩行の爬虫類。

 ヒト系としてはあまり知能が高くないようである。「ヒト、あるいは哺乳類に近い方が賢い構造として安定しやすい」という仮説の有力な根拠となっている生物の一種……


《ネイズグ全生物事典》

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