サナは一体何者なんですか?
「お願いだから暴力で解決するのはやめよう? な?」
「シロ、退くんだ」
「シロさん? 私の実力はご存じですよね?」
前後からひりつくような冷たい視線が突き刺さるが、ここで引けばどうなるかわからない。俺の今後も、誰かの命も、この家も。
「シロ、私がどれだけあなたのことを心配しているかわかっているの? 反省したと口では言っているけれど、あの時の仕打ちは目に余った」
「……」
悲痛な表情を浮かべるアイシャの言葉で、俺は当時のことを思い出した。
ーーー
「おい、早く野営の準備をしろーー悪いな、ウチの雑用がもたついてしまって」
「い、いえ……いつも思うのですが、そんなに急かさなくてもいいのでは?」
「それしかできない無能だからいいんだ」
ある戦場の合同行軍。勇者パーティはどこかの令嬢とメイドと行動を共にしていた。
俺は勇者パーティに半ば強制的に加入させられて数週間、決死隊のような斥候とそれ以外の雑用を一身に押し付けられていた。
参加当初は強く抗議をしたが聞く耳を持ってもらえず、しまいには暴力を振るわれ、『天涯孤独のお前なんて誰も必要としていない。勇者様に微力でも貢献できるだけありがたいと思え』と言われて全てを悟った。
俺は何をしても誰も文句を言われない都合のいい奴隷として連れてこられたのだと。
それ以降俺はこいつらに何を言っても無駄だと知り、口を出すことをやめた。
俺はテキパキと野営の準備を終えると、その場を後にする。
理由は単純、己を鍛えるため。
勇者の良いように使われて死ぬなんて無意味な死に方は俺のプライドが許さなかったから。
やれることを全てやり、しぶとく泥臭く生き残って"勇者パーティ"に名前を残すことで、これまでの苦難の人生に、ゴミみたいな勇者に、そしてそのような扱いをすることを黙認している国家を驚かせてやることが俺の目標だった。
「サナ、様子を見てきてあげなさい」
「畏まりました」
アイシャは勇者の性格に辟易とし、またこの少年の扱いに文句を言わないパーティメンバーの態度に失望を隠せなかった。
「ふ、ふ、ふっ……!」
速く、速く、ただひたすらに疾くーー
凸凹の山道を駆け回り、短刀で障害物を切り裂き道を拓く。
身体が大きくなく、非力な俺が見出した活路は速度。
まるで使い捨てかのように先陣を切らされる扱いに適当するためにも速さは必要であり、そのために俺は毎日夜に野山を駆け回っていた。
「ーーはっ!」
ちょうど目に飛び込んできた大きな葉っぱを袈裟に切り裂き、一息吐く。
「ふっ、ふっ、ふぅ……。結構速くなってきた気がするな」
日々のトレーニングの成果か、それとも戦いの経験からなのか、冒険者生活では体感できないほどに成長が実感できている。
「お疲れ様です」
充実感に浸っていると、背後から突然女性の声が聞こえ、慌てて臨戦体制をとる。
「ーー!? 誰だ!」
「警戒なさらないでください。アイシャ様のメイドです。アイシャ様の命令で様子を見るように言われましたので、声をかけさせていただしました」
「……あぁ」
確かに令嬢と一緒にいたメイドだった。
「でも、結構な速さで走ってきたのにどうして……」
「私、こう見えて強いので」
薄く笑みを浮かべながら腕をまくり、二の腕に力を入れてみせるメイド。
どう見てもその腕に筋肉があるようには見えなかった。
「…………」
「ほ、本当ですよ?」
「………ま、いいや。それで、俺の様子を見にきて何がしたかったんだ?」
貴族サマの同情か、はたまた加担しに来たのか。
「さぁ、私は様子を見に行くことしか頼まれていませんので、特に何かしたいと言うわけではありませんね……」
「なんでだよ!?」
思わずつっこんでしまった。
「ですが、アイシャ様はお優しい方ですので、あなたの扱いに何か思う所はあったのだと思います」
「ふーん」
あまり興味がないな。
「それより、その様子だと使い捨てティッシュのように捨てられると分かっていて、足掻いているのですよね」
「……あぁ、そうだよ」
見透かされたことにわずかに不快感を感じる。
泥沼のような貴族や王族の意向も絡んでいるため、その関係者にそれを口にされるのは鼻につくのだ。
「僭越ながら、私が教えましょうか?」
「は? あんたが?」
予想外の言葉に思わず聞き返す。
その様子に満足したような表情を浮かべ、サナは次の言葉を紡いだ。
「ええ、私実はちまたで少し有名な『陽炎』なんです」
ーーーーー
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魔王討伐したけど最期に呪いでパーティメンバーヤンデレになった。 ACSO @yukinkochan05
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