一触即発!? まずい殺し合いはやめてー!!!!
翌日の昼、未だ起きてこないカエデ以外はリビングでそれぞれ寛いでいた。
「初心だねー、カエデ」
「ナマで見てたら襲ってたかもしれない……」
「吸血しながら交わるというのも、そそりますねぇ♡」
非常に反応しずらい話題に、適当な雑誌を読んで無視を決め込む俺に、彼女たちはちらちらと視線を向けてくる。
「…………」
「じーっ」
「………………」
「ルミィ」
「わかった」
ルカがルミナリアに目配せをすると、いつのまにかか背後に立っていた彼女が俺の腕ごと巻き込むように抱きついてきた。
「のわぁ!? なに!」
「おい、暴れるな! ーーか、カエデだけ生のアレを見たなんてずるいっ! 私たちにも見せないか!」
「なんだよずるいって!?」
「今だ! かかれー!!」
拘束を解くことができない状態の俺に、アルマダの号令で二人のメスが襲いかかってきた。
「シロ、ボク優しくするからっ」
「うふふ〜。わたくしのハジメテ、もらってくださいなぁ?」
力の強いルカが俺の両足を抑え、その間にマリアが俺のズボンに手を掛ける。
「お、おい落ち着け! 一旦話し合おう、な?」
「マリア早くやって!!」
「わかってますわぁ!」
俺の必死の説得はみんなには聞こえておらず、その彼女たちの目は血走っていた。
「まずい、本当に食われる……! だ、誰かーっ! ーーむごむごむご」
「静かにするんだ」
口をルミナリアに塞がれ助けを呼ぶことすらできなくなった。
「ふへ、ふへへ……これでやっと……」
「ボク、この瞬間のために生きてきたんだ……!」
「では、ご開帳ーー」
ついにパンツごとズボンが降ろされ、俺の息子がみんなの前に現れる、というタイミングでどんどん、と扉を叩く音の後に男の声が響く。
僅かな沈黙。彼女たちは視線でどうするかを瞬時に判断していた。
「……アルマダ、行け」
「嫌だよ、そう言うルミィが行ってよ」
「無理だ。ルカ」
「絶対イヤ」
「わたくしは神秘の扉を開ける義務がありますのでぇ」
「「「「………………」」」」
……やりたいことは伝わったようだが、誰がやるかまではアイコンタクトじゃ無理みたいだ。
外にいる客を無視して一触即発の空気が漂う。
視線の交錯地点で火花が散るようなひりついた場を破壊したのは外で待っている人だった。
「おい、いるのはわかっている! 私たちは街の憲兵だ。貴様らには領主様より招集の命が出ている。出てこないなら扉を破壊するぞ!」
男の話にピリピリした空気は一転して、みんなめんどくさそうな表情を浮かべる。
「タイミング……」
「確実に昨日の貴族の件でしょうね……」
「「「「「はぁ……」」」」」
大きなため息が全員の口から漏れた。
そしてそういう雰囲気でもなくなったため俺は解放され、微妙に殺気が漏れ出ているみんなと玄関の扉を開ける。
「で、何の用かもう一度言ってもらえるか?」
「う……り、領主様から屋敷に来るよう命令が下っている! 同行願おう!」
ごごご、と赤いオーラすら見える真顔のルミナリアに気圧された兵士は、思わず態度を改めていた。
屋敷に着くと、思っていた対応とは違い丁寧に迎え入れられた。
ケーワイのことに関して何か言われるものだと思っていだのだが……。
「シロ! 久しぶりね!」
領主の部屋へ案内されると、一人の女性が俺の名を呼ぶ。
「? ……あ、アイシャ!?」
領主の席についている金髪の俺たちと同い年くらいの女性アイシャは、勇者パーティが組まれた頃に、一度指揮官として同じ戦線に立った人。
貴族であることは知っていたが、まさかこの街の領主だったとは。
「そうよ! ケーワイの奴からルミナリア様への不満と、なんとかして引き合わせろなんて言われたときには混乱したけど、まさかこの街に住んでくれてるなんて思わなかったわ!」
「ケーワイが?」
「ええ」
ケーワイが関わっていることは間違いない。
たまたまケーワイがこの街の領主にルミナリアのことを要求した。そして厄介ごとだと思いつつも、変に断るわけにもいかず、形だけでも呼んだことにしたらしい。
「アイシャ様、随分と仲がいいみたいだな?」
「シロは先の戦線で私のことを必死に守り、尽くしてくれました。そこから何度もウチに仕えないか勧誘をしても、なかなか応じてくれないんですよ。ね、シロ?」
「え、ええ……」
何とも言えない表情を浮かべるカエデと、にっこりとした笑みで応対するアイシャ。
俺はあまり雰囲気がよろしくないことを感じ取り、言葉を濁す。
ちなみに彼女との付き合いはその戦いだけなのだが、勇者パーティの雑用としてこき使われていたときに彼女が興味本位で『この子を貸しなさい』と命じて俺を世話係に任命し、それ以降お気に入りに認定されている。
「それでシロ、あなたをいじめていた人たちと住むのなんて嫌でしょう? この期に私の屋敷に来ない?」
アイシャは俺が奴隷のように扱われていたときのことしか知らない。
今ここで勧誘をすることは、彼女なりに勇者パーティの奴隷という立場から救い出す気遣いなのかもしれない。
そしてその当時のことはルミナリアたちメンバーにとって消すことのできない事実である。
彼女たちは一様に押し黙り、不安げに俺を見つめている。
まあ、俺は一人でゆっくり暮らしたいのでどちらにせよ希望に沿う答えは出ないのだが。
「あはは……。申し出はありがたいんですけど、今は遠慮しておきます」
「な、なんで!? 私ならあなたを奴隷のように扱ったりしないわ!!」
アイシャにとってその返事は予想外だったのか、取り乱したように声を上げる。
「まぁ、色々事情があって……」
あの時はパーティに入りたてであり、本当に冷たくされていたのだが、ややこしくなりそうなので濁しておくことにする。
「も、もしかして魔法で無理やり!? サナ!」
「はい」
控えていたメイド、サナがアイシャの声に反応して、俺を凝視する。
「……! 移動制限と、位置特定の魔法が!」
「やっぱり! 強制労働どころか行動を制限して監視までするなんて……! 勇者パーティはどうなってるのかしら!?」
適当に断るつもりが、話がどんどん拗れていく。
実際魔法で変な制限を受けているという事実がある分余計にややこしくなっていた。
「そ、それはシロちゃんも承知の上で……!」
「いや、それはしてない」
誰が好き好んで半ば監禁みたいなことを甘受するんだ。
「やっぱりっ!! 勇者パーティとしての誇りがあるのなら、シロを解放しなさい!」
アイシャはビシィ! と指を刺して宣言する。
「うふふ、シロくんは嫌々わたくしたちと一緒にいるわけじゃないですよねぇ?」
ここで、今まで黙っていたマリアが血のように紅い瞳を蘭々と輝かせて口を開く。
「え、あーうん」
俺は彼女たちのことが嫌いではないのは間違いない。
アイシャと出会った頃は酷い扱いだと思っていたが、そのうち行動の節々に敬意が見られるようになったし、それ以降は"俺を嫌っている勇者パーティ"ではなく、"パーティメンバー"としてみれるようになった。
「アイシャ様、あなたが見ていたときのシロくんの扱いに関しては言い訳もありません。当時は……いえ、魔王討伐が為されるまでずっと必要のないことまでシロくんに負担させていたのは事実です〜」
「だったら!」
「ですがぁ、シロくんはそんなわたくしたちを許し、受け入れてくれましたぁ」
「なら魔法は必要ないのでは?」
「魔王討伐という死と隣り合わせの日々にあなたはいません〜。そこで何があったかは理解できるものではないですしぃ、話すつもりもありません。一つだけ言えるのは、あなたが知らない絆がわたくしたちには存在するということ、です〜」
にやり、とパーティでも一番大人な女性という雰囲気を持つマリアが妖艶に笑う。
艶っぽく、どきりとしてしまうような笑みだが彼女の腹黒さを知っているため、何とか表情に出すのを堪えた。
「っーー! 言わせておけば……! サナ」
「はい」
頭に血が上ったアイシャがサナに呼びかけると、サナは短刀に手を掛ける。
「やるか」
「いくぜ……!」
「シロはボクが守る」
それに応じるように、うちのパーティの面々も武器を構えた。
まずい、こんなところで知り合い同士が殺し合うなんて絶対に避けなければならない。
ふりかえると結局勇者パーティで何があったかをしっかり説明もできていないし、その辺の食い違いが今の状況を引き起こしているように思う。
俺は、当時の俺の師匠だったサナと魔王討伐を成し遂げた英雄たちの間に、体を震わせながら割って入った。
「ーーちょ、ちょっと待ったーー!!!!」
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