035 第二章エピローグ:認められる時
アヤの逮捕はぶっちゃけ自業自得だ。
寂しいし悲しいけれど、俺たちにできることは何もない。
なので俺たちは換金したら家に戻った。
家に着いた頃には既に、ユニグロがアヤに関する声明を発表していた。
内容を要約すると、「弊社及びユウトとカスミは被害者! 遺憾だ!」である。
あと、最近では常套句となった「SNSで誹謗中傷しようものなら法的措置をとるからな」という文言で終了だ。
俺とカスミはメイから連絡を受けたが、特に怒られることはなかった。
違約金なども発生していない。
その代わり、「今後は可能な限り知らない奴とPTを組むな」とは言われた。
当然ではあるが、アヤの件に関してはネットでも話題になった。
配信のコメントでも、「逮捕は草」「銃はまずいやろw」などの声が散見されていたし、これはもう仕方ない。
ちなみに、スペチャは結構な額が飛び交っていた。
逮捕記念、アヤの保釈金、カスミに対する支援などが主な理由だ。
俺の大好きな匿名掲示板でも話題になった。
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【金好の配信中に美人お姉さんが密輸した銃をぶっ放して逮捕wwwwww】
0001 スレ主:クソワロタwwwwwwwwww
0002 名無し:堂々と密輸宣言してて草
0003 名無し:実銃ぶっぱだけでもやばいのに密輸は草w
0004 名無し:今まで観た事故配信の中でも上位にくる事故やわ
0005 名無し:美人なのに銃の腕は完璧だったのがこれまた草草草
0006 スコール:笑えるような話じゃない。国を揺るがす重大事件だ。先日まで陸自に所属していた人間が銃を密輸していたんだぞ
0007 名無し:>>6 はよこいつアク禁しろ
0008 名無し:>>6 ここはそんな真面目に話す場所じゃないのお分かり?
0009 名無し:金好のチャンネル登録者数がまた爆発してるやんけ
ついに150万超えやがった
0010 名無し:>>9 あいつの運やばすぎるからな、当然の結果や
0011 名無し:>>10 美人過ぎる陸自の現行犯逮捕とカスミちゃんのサービスショットが同じ配信で起こるとか奇跡もええとこやろ
0012 名無し:>>11 ブラが出て恥ずかしがるカスミちゃん可愛すぎるわ
0013 名無し:>>12 あんなん僕我慢できませんよ神
0014 名無し:てか金好どうなってんねん
カスミちゃんに加えて今度は美人過ぎる陸自とかおかしいやろ
0015 名無し:>>14 女は“持ってる者”に群がるんやで
0016 名無し:>>15 なにも持つ前から寄ってきてたカスミちゃんはやっぱり天使ってことやね
0017 名無し:金好関係のスレって20もいかん内にカスミちゃんの話で埋め尽くされるよな
0018 名無し:>>17 そらカスミちゃんを愛でる為の存在やからな、金好は
0019 ビクトリー:カスミちゃーん!
0020 名無し:カスミちゃんが無事なら仙台が滅んでもかまわん
0021 名無し:>>20 仙台とばっちりで草
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しかし、アヤの話題はすぐに終息することとなる。
数日後、警察がテレビの前で謝罪会見を開いたのだ。
アヤの逮捕は誤りだったと言い出した。
警察曰く、アヤの銃は音だけのおもちゃだったとのこと。
当然ながら銃弾は出ておらず、敵が弾き飛ばされたのも勘違いという。
アヤの「密輸発言」はその場のノリによる発言とのことだった。
そして、アヤは爆速で釈放されることになった。
警察が全面的に非を認めて謝罪するという異例の事態によって。
マスコミも釈放以降はアヤに触れず、陰謀論が大好きな週刊誌もだんまりだ。
ネットに関する情報規制も水面下で行われていた。
アヤの逮捕に関するニュースは検索しても出てこない。
掲示板ではアヤに関する話題になると謎の荒らしが沸いた。
どうしてそうなったのかは分からない。
だが、たしかなことがある。
アヤのバックにとんでもない人物がついているということだ。
――ある日の夜。
アヤから冒険者用のアプリで連絡が届いた。
内容は「迷惑を掛けてすまなかった」という謝罪だ。
機会があればまたPTを組んでほしいと書いてあった。
俺は二つ返事で快諾した。
警察がごめんなさいをしたことで、ユニグロも掌を返したからだ。
それに、アヤに真相を尋ねたかった。
なにがどうなっているのか。
教えてもらえるとは思わないが。
「なんだか怒濤の勢いで話が二転三転しているな」
「ですねー」
俺とカスミはコンテナの上に座り、夜空を見上げていた。
あきる野市の空は綺麗で、天然のプラネタリウムが堪能できる。
「おっ」「あっ」
同時に声を出す。
俺たちのスマホが震えたのだ。
何事かと思いきや、冒険者用のアプリからの連絡だった。
差出人はギルドだ。
『金好ユウト様の冒険者ランクが【E級】に昇格しました』
ついに昇格したのだ。
カスミのほうも同じ用件だった。
「これでD級に挑戦することが可能になりましたね!」
「だなぁ。といっても数回しか行かない気がするけど」
「そうなんですか?」
「だって敵が強くなるじゃん。危険度が増すわけだ」
「たしかにそれはそうですね」
「俺たちはハメ技とかでのらりくらり凌ぐタイプだからな」
「アヤさんの戦いを目の当たりにするとそう思っちゃいますよね」
「だなぁ。動きが別格過ぎた」
「でもでも、昇格したのだからお祝いしましょうよ! お祝いはしてもいいですよね?」
「もちろん」
「わーい! 私、ご馳走を作りますよ! 実は今日、スーパーで美味しそうなステーキを買ったんです!」
カスミがコンテナからひょいと飛び降りる。
俺もそれに続こうとしたところ、またしてもスマホが鳴った。
今度はヨウツベ経由でメッセージが届いたのだ。
メッセージの差出人は――俺の父だった。
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ユウトへ
電話番号やラインが分からなかったから、
こうしてYOTUBEのメッセージで連絡させてもらったよ。
お前の活躍はテレビやYOTUBEの配信で確認している。
ニートだった頃とは打って変わって立派になったな。
父さんも母さんも誇らしい気持ちでいっぱいだよ。
こちらも元気に過ごしている。
お前を追い出した手前、顔を見せろとは言わん。
だが、くれぐれも無理はするなよ。
冒険者は危険だからな。
それではユウト、これからも頑張ってくれ。
健闘を祈る。
父より
追伸
仕事がクビになったので母さんと私も冒険者を始めたよ。
ゴブリンを殴り殺すのはストレス発散にちょうどいいな。
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「なんで冒険者になってんだよ!」
俺は笑いながらツッコミを入れた。
それから父親に返信を送る。
ラインと電話番号を記載し、「ありがとう」と言葉を添えた。
「ユウト君、なにしているんですかー? もしかしてコンテナから飛び降りるのが怖い感じですかー?」
「そんなわけないだろ、すぐに行く」
今後も頑張ろう。
そう思いながら、俺はコンテナから飛び降りる。
着地に失敗して足を挫いた。
ニートから冒険者になった結果、想像の100万倍すごかった 絢乃 @ayanovel
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