43:婚約者候補

 



 マルツィオの病室を訪ねたジュリアは、その様子を観察した。

 他人の金だからと、無駄に贅沢している様子は無い。

 完全に相手が悪いのだから、豪華な食事を取り寄せようと、介護の手と称して若い女性を呼ぼうと、相手に拒否は出来ないだろう。

 実際に過去には、どこの高級風俗店だ?と思うほどのをした男もいたらしい。


 しかしマルツィオの部屋には、病院から手配された物しかない。

 それ以外だと、今見ている学園の教科書くらいだ。



 ジュリアの中で、マルツィオの好感度が上がった。

 質素で堅実なのは、アンドレオッティ子爵家が心がけている事である。

 ケチなのではなく、金の正しい使い道を知っているのだ。

 それはマルツィオのポルカーリ伯爵家も同じのようで、使っている筆記用具や荷物を入れている鞄などは、上質な高級品だった。


 高級品を好んで使用するからといって、驕り高ぶっているわけではない。

 マルツィオは、街のパン屋のサンドウィッチが大好きで、自分で買いに行く事も多い。



 マルツィオとジュリアは、他愛も無い話で盛り上がった。

 子供の頃には、安いけど質の良い物を使っていた事。

 誕生日に買って貰った物は、未だに全て取って置いてある事。

 高級な物を初めて貰った時には、勿体なくてなかなか使えなかった事。


 些細な事だけど、共通する事が多くて笑った。


「すぐに決めてしまうのは良くないわよね」

 ジュリアは呟く。

 マルツィオがリディオとは全然違う事は、既に解っている。


「どちらにしても直ぐには婚約出来ませんわ」

 クラウディアが笑いながら言う。

 出来なくは無いだろうが、外聞が悪いのは確かだ。

「1年の交際期間があっても良いと思うわ!」

 ビビアナもクラウディアに同意する。


「そうよね。焦ってサンテデスキ伯爵令息との二の舞いは嫌だわ」

 ジュリアも笑った。



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