44:サンテデスキ元伯爵

 



 サンテデスキ伯爵邸跡地。

 そう。跡地である。

 王都にあるサンテデスキ元伯爵邸は、縁起が悪いからと誰も買手がつかなかったのだ。

 まだ充分に使える屋敷を取り壊し、更地にしてやっと買手がついた。

 最初の査定価格よりも遥かに安く、更に取り壊しと廃材の撤去料が掛かっていた。


 元領地にあるカントリーハウスも、勿論売りに出された。

 しかし、やはりというか買手は未だについていない。

 こちらは更地にしても売れる見込みが無い為、新たにこの土地を治める事になる新領主に格安で譲るしかないだろう。



 ドメニコは、何も無くなった元伯爵邸タウンハウス跡地を眺めていた。

 自分の代で終わらせてしまったサンテデスキ伯爵。

 降爵では無く、爵位を売ったのだ。

 貴族としては不名誉この上無い行為である。


 長男だったラッザロは、正妻だったバーバラの実家であるシャッリーノ伯爵家が所有していたもう一つの伯爵位を継いだそうだ。

 バーバラの母方の爵位らしい。

 をシャッリーノ伯爵家が所有していた事も知らなかったドメニコは、どうせラッザロはサンテデスキ伯爵家を継ぐしかないのだと思っていたのだ。



 リディオは、殺人未遂罪で強制労働となった。

 後はアンドレオッティ子爵家への接近禁止なのだが、子爵邸だけでなく、関係各所全てへの立ち入り禁止なのだ。

 アンドレオッティ大財閥の息の掛かっていない店を探すのが難しいと言われる王都。


 刑期を終えても、リディオは王都に住む事は出来ないだろう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る