41:友人・知人・婚約者

 



「サンテデスキ伯爵家が爵位を売ったぞ」

 父親からの報告を聞いて、ジュリアは「まぁ!」と大袈裟に驚いてみせた。

 本当に驚いているわけでは無く、父親がそれを期待して自分に言ったのだと気付いたからだ。

 ジュリアは空気を読める子である。


 ジュリアにとっては、サンテデスキ家もリディオも終わった事であり、既に興味は無い。

 慰謝料がちゃんと払われると良いなぁくらいの関心しか無い。


 しかしサンテデスキ伯爵家のドメニコと、自身の父親であるカルミネが学生時代からの友人である事は知っていたので、大人しく話を聞いていた。



「アイツは、学生時代から姑息なヤツでな。提出物などいつも「家に忘れてきた」「落とした」と誤魔化していたな。「通学中に犬に盗られた」ってのもあったな」

 カルミネの呆れた口調に、ジュリアは首を傾げる。

「仲がよろしかったのですよね?」

 友人ではなかったのか?と、疑問に思うほどの呆れた口調だったのだ。


「友人……グループ内にいた感じで、個人的にはそれほどではなかったな」

 カルミネの説明に、ジュリアが眉を吊り上げる。

 それは友人ではなく、知人では?とジュリアは思ってしまったのだ。

「その程度の仲の方の息子と、私を婚約させたのですか!?」

 あまりの剣幕に、カルミネの腰が引ける。



「や、だって調べた時点では問題無かっただろう?他の友人の息子とは、年が離れていたし」

 普段おっとりしているジュリアは、怒ると普通の人以上に迫力がある。

 声を荒らげているだけ、マシではあるが。

 これがリディオに向けたように笑顔であったら、最終段階である。


「次の婚約者は、私が自分で決めます。良いですね?」

 ジュリアがカルミネに宣言する。

「え?でも、お父さんの意見も少しは」

「良・い・ で・ す・ね?」

 一切逆らう事を許さないジュリアの迫力に、カルミネはうんうんと頷いてしまっていた。



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