40:貴族院の決定
勝手に婚約者を名乗った事への詐欺罪。
公衆の面前で娼婦呼ばわりした事への名誉毀損罪。
既に訴えられているのに、更に「俺の女」と言った事への侮辱罪。
マルツィオ・ポルカーリへ対する暴行及び殺人未遂罪。
初対面だった二人の、不貞を思わせる発言への信用毀損罪。
リディオが落とした手紙を拾ったフットマンは、その内容を見て驚き、急いで執事へと報告した。
報告を受けた執事は、それを主人であるドメニコへと更に報告する。
報告を受けたドメニコは、頭を抱えた。
「これは、リディオが訴えられたのであって、サンテデスキ家は関係無いんだよね?」
ドメニコが執事へと質問する。
「リディオ様は成人してますので、一応監督不行届にはならないとは思いますが……」
執事が言葉を濁す。
「が?」
「これだけ罪状が多いと、個人の問題では無いかと。慰謝料諸々は、爵位を売らないと払えない額になるでしょう」
執事が溜め息を吐き出す。
「殺人未遂が特に痛いですね」
学園内で、まだ学生だった頃に起こした事件としては、確かに予想以上に重い罪だった。
貴族院にリディオを引き摺り出頭したドメニコは、殺人未遂罪の理由を問うた。
執事の言っていた通り、学園内で学生が起こした事件に対して、罪が重過ぎると感じたからだ。
「いきなり顔を殴って昏倒させ、意識の無い被害者を何度も蹴っているのは悪質だからねぇ。周りの生徒数人で押さえつけて、やっと止めたとの証言も多数あるのだよ」
思ったよりも酷い暴行を加えていたリディオを、ドメニコは信じられないモノを見るように見つめる。
「人を陥れたのは、マルツィオの方だ!俺はマルツィオを訴える!」
リディオが叫んで暴れる。
「どうぞ。アンドレオッティ子爵家が大財閥なのは、子供でも知っている貴族の常識だ。それを黙っていたからと、どのような罪に問われるのか楽しみだね?」
議長が笑顔で返すと、周りの貴族達からも失笑が漏れた。
貴族院での罪の確定は、その場で行われる物が殆どだ。
召喚された時には、全て調べ終わっており、本人の態度で多少罪が軽減されるか、逆に重くなるかが変わる程度である。
リディオは全てにおいて反省無しとなり、特に殺人未遂罪では、1番重い罪に確定した。
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