25:真実を知る時 中編
「あ!母上!母上は伯爵夫人ですよね?」
部屋に入って来たバーバラに、リディオが問い掛ける。
「何でそんな事を聞くんだ?」
バーバラが何か答える前に、ドメニコはリディオへ逆に問い掛けた。
「今日学園で、地方に居るラッザロの母親が正妻で、母上が愛人だと馬鹿な事を言う奴が居たんです」
ドメニコの顔から血の気が引いた。
「お前は、何と……」
「ちゃんと正妻は俺の母上だと、訂正しておきましたよ」
「お前の母親は、確かに正妻だが……お前の母親とは」
「ここに居る母上ですよね?皆にも、母上が正妻でラッザロの母親が愛人だと教えてやりましたよ」
ドメニコの言葉を遮って、リディオは誇らしげに言う。
自分の愚かさに気付かずに。
ドメニコは、バーバラを睨みつけた。
「え~?だって「俺は母上の子ですよね?」って聞かれたら「そうよ」って答えるでしょ~?普通」
バーバラは悪びれもせずに言う。
さすがにリディオも、何かが変だと感じたようだ。
「母上?俺は正妻の子で、母上の子なんですよね?」
リディオの質問に、バーバラは顎に指を当てて「ん~」と首を傾げる。
「正妻の子だけど、私は産んでないかな」
エヘッとバーバラは笑う。
若い頃ならばさぞかし可愛かっただろうが、今は年甲斐無くただただ品が無い。
「お前は、本当は正妻の子なのに、態々皆の前で愛人の子だと宣言したのか」
ドメニコの抑揚の無い言い方に、逆にソレが大変な事なのだとリディオは理解した。
小さい頃、地方の母親に会いに行く時、ラッザロはしつこいくらいにリディオを誘ってきた。
「母上に会いたくないのか!」
しまいには怒り出すラッザロに、なぜ他人の母親に会いに行かなくてはならないのかと、リディオも「会いたくない」と怒りをぶつけた。
少し大きくなり、地方に居るのが愛人だと理解し、益々行きたくなくなり「二度と誘うな!汚らわしい」とラッザロを怒鳴りつけてから、本当に二度と誘われなくなった。
「ラッザロは、サンテデスキ伯爵家の正当な後継者なのか」
リディオの呆然とした呟きに、ドメニコは何を今更と返す。
「俺は子爵家に婿入りするしか無いのか」
リディオの更なる呟きに、ドメニコは静かに問い掛ける。
「どこに婿入りするつもりだ?」
リディオはやっと焦点を合わし、ドメニコを見た。
「アンドレオッティ子爵家に決まってるじゃないですか!」
「お前の有責で、婚約破棄されている」
「俺は何もしていない!」
「そうか?婚約者との交流もせず、理不尽な罵倒をし、怪我までさせたのだろう?」
何が痴話喧嘩だ……ドメニコは過去の自分を嘲笑った。
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