21:怒った商人の娘は……
「ジュリア様、大丈夫でした?」
「馬鹿は行動が予測出来ないから困りますわ」
ジュリアが教室に入ると、ビビアナとクラウディアが駆け寄って来た。
「本当は助けに行きたかったのですけど、ミケーレ様とノルベルト様がご一緒でしたでしょ?かえって邪魔になりそうで」
クラウディアがシュンとする。
「あの二人は、情報量も性格の悪さも天下一品だからね」
ビビアナもどこか悔しそうだ。
「ミケーレお兄様も、ノルベルトお兄様も、大変お優しい方ですよ」
ジュリアの笑顔を見て、二人は「そうですね」と頷いた。
心の中では「ジュリア様と婚約者限定ですが」と付け足して……。
「それよりも、なぜサンテデスキ伯爵令息は、未だに私の婚約者だと名乗るのでしょう」
ジュリアにしては珍しく怒りを滲ませながら言う。
「もう3ヶ月も前に破棄されてますのよ!私の誕生日パーティーにだって呼んでませんのに、失礼にも程がありますわ」
怒っていても可愛いなぁ、などと呑気に思う二人は、先程の冷徹なジュリアを見ていない。
「そもそも、なぜアンドレオッティ子爵家を貧乏だと思っているのか、そこから疑問なのですわ」
ジュリアの疑問も当然で、仕事上直接は関わり合いがなくても、「最後はアンドレオッティに繋がる」と言われるほど、アンドレオッティ大財閥の影響力は凄いのだ。
貴族に限らず、庶民でも裕福な家は、アンドレオッティ大財閥を知っているし、敵対しようとは思わないだろう。
王家も、アンドレオッティが他国に行かないように気を使っていると言われている。
未だに子爵位でいられるのも、何代か前の当主に強制して「じゃあ、爵位返上して他国へ行きます」と言われてしまい、慌てて撤回したからと噂されている。
これはあくまで都市伝説の域を出ないが、嘘だと言い切れない何かが、アンドレオッティ子爵家にはあった。
商人の娘であるジュリア。
のほほんと、おっとりとしているが、自分に害なす者に容赦が無いのは、さすがアンドレオッティの血である。
学園から戻ると、早々にリディオを法的に訴えた。
勝手に婚約者を名乗った事への詐欺罪。
公衆の面前で娼婦呼ばわりした事への名誉毀損罪。
サンテデスキ伯爵家では無く、リディオ・サンテデスキ個人を訴えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます