14:後継者お披露目
アンドレオッティ子爵家の迎賓館で、かつてない規模のパーティーが始まった。
大財閥の本家で有りながら、商売に集中したいとの理由で陞爵を断り続けているアンドレオッティ子爵。
堅実で清廉な生活を心掛けてきたそのアンドレオッティ子爵の、子爵という地位には不相応な、そしてアンドレオッティ大財閥の本家という立場には相応しい、きらびやかで豪華なパーティー。
「誕生日おめでとう!ジュリア」
アンドレオッティ子爵家当主、カルミネの掛け声でパーティーが始まった。
後継者である一人娘、ジュリアの誕生日パーティーである。
やっと成人扱いされる年齢になり、大々的にお披露目されたジュリア。
これからは夜会やお茶会にも一人で参加出来るようになる。
階段を降りて来たジュリアは、ライトグリーンのドレスを着ていて、年齢よりは幼く見えるが、とても可愛らしい。
そしてその後ろには、赤いドレスを着た艶麗な美女と、水色のドレスを着た楚々とした美女を従えていた。
「まるで精霊のようだわ」
会場のあちこちで感嘆の溜め息が聞こえる。
「本日は私の為にお集まりいただき、誠にありがとうございます」
他国の重鎮や自国の中枢を担う人物達の前でも、臆する事無く挨拶をするジュリア。
その後ろに控えるビビアナとクラウディアは、微笑みを浮かべているが、内心では倒れそうな位に緊張していた。
色々な家の者がジュリアとその両親に挨拶に来る。
特に婚約者がいなくて、ジュリアと年齢的に釣り合う男性の居る家は、気合の入り方が違った。
嫡男しか男性が居ないにも関わらず、婿にどうかと言ってくる家までいた。
「お腹空いちゃいました」
人の波が切れた一瞬に、ジュリアが呟く。
「良いわよ、主要な家からの挨拶は終わったわ。折角ジュリアの好物を用意させたのだもの、食べていらっしゃいな」
母親のマリアンナは、ジュリアの背中を優しく押した。
「頼んだぞ」
カルミネが、ビビアナとクラウディアに声を掛ける。
「かしこまりました」
二人は声を揃えて返事をした。
三人並んで歩く後ろ姿を、ジュリアの両親は温かく見守る。
「早く新しい婚約者を探してやらんとな」
カルミネが笑いながら横の妻に言う。
「ええ、本当に。今度はちゃんとジュリアを大切にしてくれる方にしましょうね」
マリアンナが若干隣の夫を睨み上げる。
「優しく実直なバーバラが育てたのだから、大丈夫だと思っていたんだよ」
カルミネが苦笑する。
バーバラとはサンテデスキ伯爵夫人の名前である。
「確かにねぇ。
「そしてバーバラのフリをして、愛人が伯爵夫人として振る舞って居たのだから驚きだな」
なにやら、一波乱起きそうである。
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