13:パーティーの前に……
王都の中心街から少し外れた所に、その屋敷は在った。
他国の重鎮を宿泊込みでもてなす施設なので、雑多な街中よりも郊外に在る方が都合が良いのだ。
国内外からの来客の馬車を全て停められる大きさの馬車置き場だけでも、王都内の子爵のタウンハウスよりも有りそうだ。
広さもそうだが、その建物は恐ろしく手間と技術と、そしてお金が掛けられていた。
入口から既に、有名な彫刻家の手掛けた像が迎えてくれる。
普通の屋敷では1番目立つ場所に大切に飾られる像が、建物の玄関に設置されているのだ。
その彫刻家を無名の頃から支援し、育ててきたアンドレオッティ子爵家だから出来る事だ。
エントランスに飾られている絵画も、彫刻も、陶磁器も、どれ一つとっても王都内で家を買える。
床に敷かれている絨毯も、花も、全てが一級品だった。
「わ、私、ここに居て良いのかしら?」
ビビアナがエントランスで天井を見上げながら呟く。
珍しく気圧されている。
天井では、天使が楽しそうに青空を飛んでいる。
そしてきらびやかなシャンデリア。
「それを言ったら私ですわ。ビビアナは辺境伯令嬢ですけど、うちは単なる辺境の伯爵家ですわ」
クラウディアは、キョロキョロと不安そうに周りを見回してい。
「ビビアナ!クラウディア!」
家族より先に来て、挙動不審になっている二人をジュリアが迎えに出た。
本来、主役は最後まで表に出て来ないものだが、この二人はジュリアの我儘で先に来てもらったので、特例である。
友人二人を先に呼んだのには、理由があった。
「こちらがお話したドレスですの」
ビビアナには、メリハリボディに合う華美だけど上品なカーマインレッドのドレス。
クラウディアには、スレンダーラインのマリンブルーのドレス。
主役のジュリアは、ライトグリーンのドレープを活かしたドレスである。
3着並んでトルソーに飾ってある。
「精霊みたい」
思わずクラウディアが呟くと、ジュリアがその手を握る。
「そうでしょう!?私も、この生地を見た時に同じ感想を口にしましたわ!」
ジュリアの言葉に、クラウディアもビビアナも驚く。
「生地を見て?」
ビビアナが問うと、ジュリアはキラキラとした目を向けてくる。
「ええ!もう、お二人がこの生地で作られたドレスを着た姿が思い浮かびましたの!」
ジュリアの更なる説明に、やはりアンドレオッティ家の本家。ほわほわしておっとりなお嬢様に見えて、しっかりとアンドレオッティなのだと二人はしみじみと感じた。
そして、それはパーティーでも実感するのである。
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