12:おかしな日 sideリディオ

 



「お前の家って、サンテデスキ伯爵だったよな?」

 クラスの大して仲良くもない男から、いきなり聞かれた。

「あぁ!?だったら何だよ」

 男を睨みつけながら答える。

「今日、休まなくて良いのか?」

「はぁあ?」

 何で俺の休みを、コイツに指示されなきゃいけないんだ?


 男の視線がチラリと教室内を見た。

 それでやっと、俺は教室の雰囲気がいつもと違う事に気が付いた。


 人が少ない。

 クラスの中心的な人物が軒並み不在だ。

 なんだ?サボりか?


「俺の家は直接取引が無いからアレだけど、お前の所は違うだろ?」

 もう一人、違う男が話し掛けてきた。

「それとも当主と後継者だけが呼ばれたのか?」

「学園に通ってれば、後継者以外も呼ばれるって話だったけどな」

「今年は特別だって話だもんな」

 何だ?何の話をしているんだ?コイツラは。



「席につけ~!今日は人数が少ないから自習だ!だが勝手に帰ったりしたら単位に響くからな」

 詳しく聞こうとしたら、担任が教室に入って来た。

 しかも人数が少ないから自習だと!?

 教室内を見回すと、半分以上が欠席していた。


「ここまで休みが増えるなら、臨時休校にしたのになぁ」

 担任のボヤキを聞いて、学園全体がこんな状態なのだろう想像が出来た。

 しかも、俺以外が理由を解っている?



 自習中でも教師がずっと教室内に居たので、雑談が出来る雰囲気では無かった。

 それでもヒソヒソと話し声はする。

 俺は近くの生徒に声を掛けようとしたが、相手はそれを察して逃げてしまった。

 教師に質問しに席を立ってしまうのだ。


 それを何人もにされれば、さすがに気付く。

 俺は、避けられていた。


 授業の合間の休憩時間には、俺以外の生徒が教室から消えた。

 何だこの気持ち悪い空気は!!

 何で俺が避けられているんだ!?

 しかも今までほとんど交流がないクラスメートにまで、避けられ逃げられている。



 何も判らないまま1日が終わった。



 寮に帰っても、やはり生徒は少ない。

 朝は、朝食の時間には、いつも通り生徒で溢れていた。

 食堂内を見回すと、元同室のマルツィオが居た。

「マルツィオ!」

 名前を呼ぶと、驚いた顔をした後に、迷惑そうに顔を歪めた。

 失礼だな!こんな嫌な奴だったのか!!


「何でここに居るのか……悪いけど、友人だと思われたくない。話し掛けないでくれ」

 まだ少し残っているのに、マルツィオは食器を手に席を立って行ってしまった。


 俺がお前に、いや、お前達に何かしたか?

 そう聞く事さえ出来なかった。



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