11:動き始めた

 



 婚約してから9ヶ月。ジュリアが学園に通いだしてから半年が経った。

 例の事件からは3ヶ月が経っている。

 結局、リディオはジュリアに怪我を負わせた事について、一言も謝罪しなかった。

 手紙一通届かなかったのである。

 勿論、学園で直接謝って来る事も無かった。


 カルミネも特に伯爵家に何かを連絡する事は無かった。

 むしろ、一切の連絡をっていた。

 いつもなら契約期限が近付くと連絡を入れ契約更新をするのだが、それもせずにそのまま契約満了による取引終了手続きをしてしまっていた。

 今までの、親会社に当たるアンドレオッティ財閥側から連絡を入れている事自体おかしかったのだ。


 ジワジワとサンテデスキ伯爵家との関係を絶っていく。

 アンドレオッティ子爵家当主カルミネを筆頭に、アンドレオッティ財閥は、ジュリアを傷付けたサンテデスキ伯爵家を追い詰めていっていた。




「ジュリア様、明日は学園をお休みなさるので良いのですよね?」

 ビビアナがジュリアに確認をする。

 その声は弾んでいる。

「はい。タウンハウスではなく、社交の為だけに建てた屋敷でのパーティーになりますので、皆様にもそちらにお泊り頂く予定です」

 ジュリアもどこかソワソワしている。


「あの迎賓館並のお屋敷ですよね?」

 クラウディアもうっとりとした表情で聞いてくる。

「はい。特に今年は招待客を増やすと、お父様もお母様も張り切ってしまってますので、隣国の親戚まで呼んでしまいましたの」

 ジュリアの説明に、ビビアナとクラウディアは一瞬意識が遠くなりかけた。


「隣国の親戚!?」

「はい。なので、明日はこの学園内のアンドレオッティ財閥関係者も、軒並みお休みする事になりますわね」

 のほほんと笑って言うジュリアを見て、ビビアナは苦笑し、クラウディアは額に手を当てた。



 アンドレオッティ本家からの招待を断れる家は、全世界でも片手で足りるだろう。

 特に今回は隣国からも招待客が来るという。

 国内なのに断ったら、それは「もう取引はしません」と同義に取られるだろう。


 そして明日、アンドレオッティ財閥と取引があるはずなのに、パーティーに招待されず登校した生徒は、他の関係者から確実に切られるだろう。


 なぜなら、明日は後継者であるジュリアの誕生日パーティーなのだから。



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