04:顔合わせ

 



 アンドレオッティ子爵家のタウンハウスに着いたリディオは、その屋敷の規模にガッカリした。

 伯爵家のカントリーハウス程ではないにしても、タウンハウスは同じ位の大きさがあるかもしれないと期待していたからだ。

 しかし着いた屋敷は、遥かに小さいものだった。


 邸のエントランスで両親同士が挨拶をしているのを、リディオは黙って見ていた。

 子爵家の子供が居たが、チラリと見ただけで無視した。

「えぇと、緊張しているのだと思います。紹介は落ち着いてからでも?」

 挨拶を促してもそっぽを向いているリディオに焦ったザンテデスキ伯爵は、場所の移動を提案する。


 本来そういう提案は屋敷の主であるアンドレオッティ子爵からするものであるが、学生時代からの友人という気安い関係から、ザンテデスキ伯爵の意見がすぐに受け入れられた。




「小さい家だな」

 王都にあるアンドレオッティ子爵家のタウンハウスで、リディオは馬鹿にしたように呟いた。

 招き入れられた玄関で軽く挨拶をし、応接室へと案内されている最中だった。

 前を歩いている両家の両親には聞こえなかったようだが、ほぼ隣を歩いているジュリアにはしっかりと聞こえていた。


 ジュリアは首を傾げる。

 王都のタウンハウスには、爵位によって持てる大きさが決まっている。

 それは大財閥のアンドレオッティ家でも変わらない。

 そんな貴族の常識も知らないのか、とジュリアはリディオを異世界人でも見るような気持ちで見つめた。



 応接室に通されてから、お互いの父親から紹介をされる。

「リディオ・サンテデスキです。ジュリア嬢より一つ年上だから、今年からもう学園に通っているんだよ」

 ドメニコ・サンテデスキ伯爵は、ジュリアに息子を紹介した。

「リディオ・サンテデスキだ」

 紹介されたリディオは、名前を名乗っただけで、ジュリアと目を合わせようともしない。


 ジュリアと父親のカルミネは、視線を合わせた。

 この婚約は伯爵側から懇願されて結んだものだ。このような不遜な態度を取られる意味が解らない。


「サンテデスキ伯爵、どうやらご子息は乗り気ではないようだね?」

 カルミネが言うと、ドメニコは慌ててリディオの頭を鷲掴みにして無理矢理下げさせる。

「し、思春期で、同じ位の女性が恥ずかしくてしょうがないのですよ!」

「そうですわ。思春期の男の子って難しくって、私にも反抗ばかり」

 サンテデスキ夫婦がリディオが照れているだけだと言い張り、その日はそれで終わった。


 ジュリアが挨拶した時も不機嫌な表情を変えず、「本当に照れているのか?」との疑問はアンドレオッティ家側に残ったが、別に気に入らなければ婚約解消すれば良いだけだと、特に言及はしなかった。



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