第29話
初めてのEランクダンジョンにチャレンジした翌日。
五十嵐さんの仕事の都合もあるので、今日はゴブリンダンジョンに来ている。
「はい!めぐちゃんは、これをお願い!袋いっぱいになるまで集めてね!」
そして、いつもはどちらかというと前衛になることが多い望月さんが、南さんから採取袋を持たされ薬草集めに勤しんでいた。
昨日の結果がかなり堪えたようで、南さんが射撃の練習をしたいと言っていたので、俺と二人で午前中は射撃の特訓、午後からは剣の特訓をすることになった。
当面の目標は、俺と同じようにここの魔物相手にヘッドショットできるようにすることだそうだ。昨日の俺の結果から、ここでヘッドショットできてもウルフ相手になかなか当たらないんだけどなぁと思ったが、少しでも命中率が上がるのはいい事なので何も言わないでおく。
そして、銃の扱いは自分で気をつけている所や感覚などをできるだけ伝え、剣の扱いは仁さんに教えてもらった事をそのまま伝えた。
「うーん…なかなか上手くいかないね…。」
「今日始めたとこだし、仕方ないよ。地道にいこう!」
南さんがなかなか戦闘が上手くならないことに落ち込んでいて、自分も同じだったのでその気持ちがとてもよくわかる。
最近は自分の体の使い方とかで、こうしたらいいかな?みたいなのがわかってきたが、他人に教えるのは別物だ。見ていても何てアドバイスしたらいいのかがわからない。
「今日帰ったら仁さんにも相談してみようか?何かいいアドバイスが貰えるかもしれないし。」
困った時はとりあえず仁さんに相談だ!何か食べ物を持っていけばきっと一緒に考えてくれるだろう。
☆☆☆
ダンジョンでの特訓を終えてから、魔石はすべて五十嵐さんに渡し、精算終了後に自動で口座に入金してもらうことになった。クランに入ると便利な事が多い。普通の窓口でも同じようにすればいいのでは?と思ったが、何かダメな理由でもあるんだろうか?
夕飯はクランハウス内の食堂で済ませる。夕飯時だけ仁さん達の奥さんが料理を作ってくれるので、ここでご飯を食べればタダだ。クランの運営費から出ているから元は自分たちのお金だったりする。
食後にコミュニティエリアに行くと、仁さん達がのんびりとお酒を飲んでいたので相談してみることにした。
「それなら、銃に関してはマシンガンタイプを使えばいいんじゃないか?たくさん撃てるぞ?」
一緒にお酒を飲んでいた蓮さんがそう言ってきた。
今、俺と南さんが使っているのはハンドガンタイプ。マガジンは魔力10の消費で10発分の弾が撃てるようになる仕様だ。
そして、蓮さんが言ったマシンガンタイプは、同じく魔力消費10に対して30発の弾が撃てるようになる。ただし、1発の威力はハンドガンの3分の1になってしまう。
ちなみにライフルタイプは5発撃てて、威力はハンドガンの2倍だ。
「それだと、俺たちの攻撃力じゃダメージ与えられなくなっちゃいませんか?」
今俺の攻撃力が19、南さんが26、望月さんが28だ。魔力のみを使っての攻撃はこのステータス値依存なので、俺の場合は1発が約6とかなり貧弱な攻撃力になってしまう。防御力が20あるウルフに対して、ダメージを与えられるのか疑問だった。
「そうか、その問題があったかぁ。」
「あちゃ〜」っといった感じに蓮さんが手を頭に当てていた。
「確実にダメージを与えていくならライフルタイプなんだろうが、当てられないのが問題だもんなぁ…マシンガンタイプじゃ当ててもダメージが期待できないとなると…。」
仁さんもこの問題に関しては腕を組んで、「どうしたもんか…。」と困っている様子だった。
とりあえず、剣の特訓に関しては、仁さんと蓮さんが暇な時に見てくれることになったが、銃に関してはこのクランに使っている人がいないのでアドバイスのしようが無いと言われてしまった。
「とりあえず、全タイプの銃を集めちゃえば?今は近いからウルフダンジョン行ってるけど、これから色んなダンジョンに行くだろうし、そのダンジョンの特性に合わせて武器を変えられるのは一つの強みだと思うぞ?」
蓮さんが地元にあるラットダンジョンを例に話をしてくれた。そのダンジョンはGランクダンジョンで、小さなネズミがダンジョン内の洞窟を走り回っているとのことだ、そこでは剣などの普通の武器はあまり役に立たないらしい。小さくすばしっこいので、当てるのがかなり難しいそうだ。
そういった場所では連射できるマシンガンが役に立つだろうし、逆にゴーレムダンジョンのように堅い相手には、ライフルが必要だろうと言われた。
ちなみに蓮さんの地元は田舎の農村で、そんなダンジョンに冒険者など来ないので、爺さん婆さんがネズミ捕りを設置して増えすぎないように管理しているらしい。
仁さんと蓮さんと話をした後で、三人で話し合いをした。
「試しに1丁ずつマシンガンとライフルを買ってみるか?」
「うーん、でもハンドガンより高いんだよね?」
「たしか、20万と25万。ハンドガン買う時に調べたけど、そのぐらいだったはず。」
「「……」」
金額を言った瞬間二人とも黙ってしまったが、南さんは何かを考えている感じだったので、少し待ってみると「う~ん…」と唸りながらも話し始めた。
「今月お金を貯めて、ライフルを買ってみるのはどうかなぁ?」
今までのホテル代が3人分で40万ほど浮いているから、仁さんに毎月の返済20万をしたとしても20万残るはず。ゴブリンダンジョンではパーティを組む前のように分かれて行動して稼ぎを戻し、ウルフダンジョンに行った日の収入減少分を俺のスキルで穴埋めすれば何とか25万貯まるんじゃないか?ということだった。
銃の命中率は練習するしかないけど、当てられるようになれば、ウルフを倒せなくてもかなりのダメージを与えられるだろうし、討伐スピードが上がるかもしれない。そうすれば収入も増えるだろうということだった。
「それなら今月は向こうへ行かずに、ここでお金貯めればいいんじゃない?」
「望月さんの言う通り、ここでゴブリンとコボルト狩りまくる方のが貯まるの早いかもしれな。」
俺と望月さんはそう考えていたが、南さんに「それはダメ」と言われてしまった。
「ウルフダンジョンに行かないとレベル上がらないし、東城君のスキルを活かすためにも素材が必要でしょ。向こうにもいかないとダメだよ。」
1ヵ月お金稼ぎだけすれば効率よく貯められるが、自分達のレベルアップの成長が1ヵ月止まることになると言われ、ただでさえ他の人に比べたら遅い成長スピードなので、南さんの案で進めることにした。
☆☆☆
自分の部屋に戻り、明日の準備をしてから二人のための革装備を作る。
「明日はウルフダンジョンだし、二人の革装備作っておかないとな。」
今回作るのは、革の胸当て。必要素材は革を2枚と、腰巻を2枚。消費魔力は3だ。
ゴブリンなどからドロップした腰巻を使うのは抵抗があるが、ドロップ品は汚れてたり臭かったりしないので、気にしないでおく。サイズは聞いてあるから、チャチャッと作ってしまおう。
「よし、完成っと。これで少しは安心して戦えるかな?」
それにしれも、2人とも普通にサイズを教えてくれたが、こういうのって抵抗とかないんだろうか…?南さんはちょっと恥ずかしそうにしてたけど、望月さんは堂々とサイズの紙を渡してきてたなぁと思いだしながら、ついでに残りの魔力でポーションを作ってから寝ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。