第28話


 「それじゃ、三人とも気をつけてな!無理はすんじゃねえぞ。」


 「「「はい!行ってきます!」」」


 仁さんの見送りを受けて、仁さんから車を借り五十嵐さんの運転でEランクダンジョンへ向かった。


 「本当に送り迎えしてもらって良かったんですか?お仕事溜まっちゃいませんか?」


 南さんが申し訳なさそうに尋ねると、五十嵐さんは「大丈夫よ♪」と軽い感じで話し始めた。


 「クランの専属になったから、事務作業も買取作業もクランの15人分だけでいいのよ。むしろ、仕事量が減って暇になっちゃうくらいね。今からの時期はみんなの確定申告書類の作成があるからちょっと事務作業が増えちゃうけど、みんなギルド施設使ってくれてるから、経費も売上も全部計算されてるし、すぐに終わっちゃうわ。」


 最後に「それにタブレットも持ってきてるしね。」と付け加えて、俺たちの送迎をしてもなんら問題が無いと言ってくれた。


 それから俺のFランクへのランクアップの話になったり、みんなのスキルの話になったりと、お喋りをしているうちに目的地へと着いた。


 「それじゃ気をつけてね。近くのカフェで時間潰してるから、帰ってきたら連絡してね。」


 そう言ってから車が離れていくので、俺たちはさっそくダンジョンへ向かうことにした。

 マップは五十嵐さんがこっちのギルドから取り寄せてくれてあったので、すでに入手済みだ。ここは草原と森が入り混じったようなダンジョンで、草むらに木がところどころ生い茂っている感じだ。


 このダンジョンで出てくる魔物はウルフで、基本3〜5体で行動しているらしい。


 ウルフのステータスの平均値はこんな感じだ


 生命力:20

 魔 力:10

 攻撃力:20

 防御力:20

 敏 捷:30


 下層へ進んで行くと、ファイアボールを吐いてくるレッドウルフもいるらしい。


 魔石は買取500円のEランクで、ドロップ率は30%ぐらい。ひとつの群れを倒せば1個はドロップするだろうと言われた。


 素材は革、牙、毛玉、骨の四つがドロップする。革と牙は魔石と同じ500円で買取してもらえるらしいが、毛玉は10円、骨は買取不可らしい。

 革と牙は装備の素材になったり、鞄などにも使われるらしく、毛玉は大量に集めて防寒具などに使われるらしい。毛玉1つのサイズが小さいので10円とのことだ。



 「ウルフを200体くらい倒せば、魔石だけで一人1万円ぐらいになるわけか。」


 「じゃぁとりあえず、目標は200体だね!」


 「革もたくさん手に入れたいし頑張ろうね♪」



 望月さんも南さんもすごくやる気のようだ。革がたくさん落ちるといいな。



☆☆☆



 ダンジョンを進んで行くと、4体のウルフを見つけた。


 「じゃぁ話してた通りに、先に3体を倒して1体と戦ってみよう」


 「「うん!」」


 ちょっと卑怯な戦法だが、3体を銃とエアバレットで遠距離攻撃し、1体相手に近接戦でどのぐらい戦えるかを試すことにした。いきなりステータスがゴブリンの倍以上ある魔物を複数相手取るなんて危険すぎるからな。


 木の陰からウルフたちに銃を向け準備をすると、発射音の小さいエアバレットから撃ち込んでもらった。


 ーシュン、シュン、シュン…ー


 撃ち込んだ5発のうち、3発が2体のウルフに当たるが、ゴブリンのように致命傷にはなっていないようだ。そして、攻撃されたことでウルフ達が一斉にこちらへ走ってくる。



 「ええっ!?2発当たった奴も普通に走ってくるじゃん!」


 「ちょっ、そんなこと言ってる場合じゃないって!撃って撃って!!」


 ーピュン、ピュン、ピュンー

  ーピュン、ピュン、ピュンー

 ーシュン、シュン、シュンー


 「なにこれ、速くて当たらないよっ。」


 銃を最近使い始めた南さんは、ウルフになかなか攻撃を当てられないようで焦っていたが、3人で撃ちまくったことで2体は倒すことができた。あと2体は剣で何とかするしかなさそうだ。



 「エンチャントっ!1体は任せて!」



 望月さんがバフを掛けて先頭の1体に突っ込んで行ったので、俺と南さんもレイピアに持ち替えて、もう1体を二人で倒すことになった。



☆☆☆



 「ふぃ~…なんとかなったねぇ…。」


 「私射撃のセンス無いのかなぁ…。」


 「いや、俺もたいして当たってなかったからお互い様だよ…。」



 この初戦でマガジン3本分を打ち尽くし、望月さんも結構魔力を使ってしまったようだ。

 望月さんは1対1で戦えていたが、俺と南さんは二人がかりでやっとという感じだった。俺はステータスが低く、南さんは近接戦が苦手。3体以上で接近されたら危ない気がする。



 「これ、200体とか厳しくね?」


 「この調子じゃ、あっという間に私と東城君の魔力が無くなっちゃうよ。」


 「回復速度速いけど、私もこのペースじゃすぐ弾切れしちゃうかなぁ…。」



 相談した結果、今日は出来るだけダンジョンの出入口付近で行動して、いつでも帰れるようにウルフと戦う事にした。

 まずは、三人ともがウルフ相手に慣れることからのスタートになったが、仁さんも無理はするなと言っていたし、安全第一で行動しよう。


 ウルフとの初戦を終えてから、休憩を挟みつつ10の群れを倒した所で魔力切れとなったため、五十嵐さんに連絡をして迎えに来てもらうことにした。


 今日の収穫は魔石14個、革5枚、牙8本、毛玉10個


 革は売らないので、それ以外を換金すると11,100円だ。手数料を引くと9,990円で1人3,330円という結果になってしまった。そこから3%はクラン運営費で引かれる。


 「なんてこった…ゴブリンダンジョンのが稼ぎが良かったなんて…。」


 「東城君…帰ったら私たち二人で薬草採取してくるから、ポーション作ってくれない?」


 「うん…沢山とって来るから沢山作って…これじゃ仁さんにお金返せない…」


 あまりの結果に帰りの車の中はお通夜状態だった。


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