第24話


 11月末にゴブリンキラーを取得してから仁さんへ連絡をすると、「12月頭に一度会ってクラン入会の書類を書いてもらうから」と言われた為、今はギルドのカフェで仁さんたちが来るのを待っている。


 ゴブリンキラーは10月にしっかりと準備した事もあって、1回のチャレンジで取ることができた。

 そしてコボルトの時とは違い、ほぼ毎回2体のゴブリンと剣で戦闘していたことで、継続戦闘するための体力と、剣での戦闘技術も少しは上がったんじゃないかと思う。


 剣での戦闘技術が少しだけというのは、コボルトの時と同じでゴブリン2体との戦闘の流れが途中からただ繰り返しの作業になっていたからだ。


 ①1体目のゴブリンへ突撃し、武器を持っている腕か足を斬り走り抜ける。

 ②武器を落としたり、体勢を崩している間に2体目のゴブリンへ同様に突撃する。

 ③先に倒せそうな方へ突撃し走り抜け、切り返してもう1体へ突撃する。


 複数の敵相手に、1体と鍔迫り合いになってしまうと一気に危険度が上がってしまうのと、戦闘時間が長くなってしまう。そのためコボルトキラーで上昇した敏捷を活かして、倒すまでひたすら一撃離脱を繰り返す事にした。


 こんな戦い方をしていたため、剣での戦闘が強くなったとは思えないが、走り続ける持久力は付いたと胸を張って言える。


 武器を軽いレイピアへ変えて、防具も見直し軽量化したのは正解だった。重いままだったら休憩回数も増えて厳しかったんじゃないかと思う。アドバイスしてくれた仁さんには感謝だ。


 と、そんなことを思い出していると、仁さんがやってきた。そして何故か一緒に、南さんと望月さんまでいる。


 「東城君、こんにちは。」

 「ダンジョンで何回か見かけたけど、久しぶりっ!」


 「えっ?…あぁ、久しぶり」


 なんでこの二人が仁さんと一緒に?もしかして、仁さんが紹介してくれる予定の冒険者ってこの二人だったのか?とそんな事を考えていると、仁さんに声を掛けられた。


 「はははっ!驚いたか?二人から坊主と同級生だって話は聞いてたから、ずっと黙ってたんだ!この二人が一緒にEランクダンジョンに行く冒険者で、クランの仲間だ!」

 

 「えっ‼二人もクランに入るんですか!?なら今回の臨時パーティじゃなくて、継続的にパーティ組んでもらえたり…?」


 「それは実際にパーティで行動してみてから3人で相談して決めろ。俺がしてやるのは紹介してやる所までだ。相性が悪いのに無理にパーティ組ませ続けるわけにいかないからな。」

 

 「それもそうですね…。南さん、望月さん、とりあえず臨時パーティでよろしくお願いします。」


 学生の頃に何度か組んだ事がある二人だけど、こうして冒険者になってからは初めてなのでしっかり挨拶したのに「うん!よろしくね!」「頑張ろうね~!」とフランクな感じで返されてしまい、少しだけ恥ずかしかった。


 改めての挨拶も終わると、仁さんが何枚かの書類を取り出してテーブルの上に並べた。どうやらクランの名簿や、契約書などがあるようだ。


 「まず、このクラン名簿に名前と冒険者ランクを書いてくれ。んで、こっちがクランに入るための入会書類な。最後に、これがクラン契約の内容で確認したらサインをしてくれ。」


 そう言われて渡された名簿を見てみると、リーダー欄に仁さんの名前があり、副リーダー欄には蓮という人と亜紀という人の名前が入っている。この二人のランクはCで他の人も全員がBかCランクだった。

 

 「この名簿にGランクって書かないといけないのか…。」


 「あはは…私たちもFランクだから、書くのが恐れ多いね。」


 「ちょっとでも差を埋められるように頑張らないと…。」


 仁さんの知り合いなので、他の人たちのランクが高いのは分かっていたが、こうやって書き出されていると自分のランクが情けなくなってくる。


 「坊主、安心しろ!今年の実績があれば来年にはFランクに昇格するだろ。まぁここに書くのはGランクじゃないとダメだけどな。」


 1年間の活動実績でランクの昇格が決まるので、ソロであれだけの数のFランク魔石を納品していたことから、Fランクに上がるのは確実だと仁さんに言われた。南さんと望月さんもかなりの数の魔石を納品しているが、Eランクのダンジョンに潜っていないので昇格は無いとのことだ。


 それから書類に必要事項を記入していき、最後にお金の話になった。

 まず、会費の100万円に関しては1年目だけ仁さんが立て替えてくれる事になった。仁さんレベルになると本人の会費含めて400万をポンと出せてしまうらしい。いずれは仁さんぐらい稼げるようになりたいなと思う。

 それから、クランへの活動費は納品収入の3%。クラン設立初年度で、設備を買い揃えていくのにお金が必要らしく、他の人たちは10%だそうだ。俺たちは稼ぎの関係から低く設定してくれたらしい。2年目からは全員5%にするらしく、1年である程度稼げるように頑張ってくれと言われた。


 「いざとなったらポーションを量産するか…。」


 「坊主、ポーション以外にも作ってくれよ。んでスキルを成長させてくれ。」


 仁さんが切実に言ってくるので、できるだけポーションだけで乗り切ることの無いようにしようと心に決めた。


 クラン入会の手続きは終わり、仁さんはそのままギルドの受付へ行くと言うので、自分たち3人はFダンジョンへ向かう事にする。


 「まだ時間あるし、この後ダンジョン行く?二人の戦い方も見たいし、なにより仁さんに立て替えてもらうお金を少しでも少なくしたいし…。」


 「そ、そうだね。返さないといけないお金は少ない方がいいもんね。」

 

 「じゃあ、準備してゴブリン狩りに行こー!東城君に私の魔法の威力を見せてあげよう♪」



 この後、望月さんのエアバレットとエンチャントを見て「俺達いらないじゃん!」と南さんと一緒に落ち込む事になってしまった。

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