第21話


五十嵐さんへのお返しに悩んだが、何がいいか全く思い浮かばなかったので先送りにし、今日もダンジョンへと来ている。

 今月納品した魔石の数的には、そろそろコボルトキラーが取れてもいい頃なんだが、毎回倒した数をカウントしているわけではないので内心ドキドキだ。運よくドロップが多かっただけで、討伐数が少なかったとかありそうで怖い。


 いつもの流れでひたすらコボルトを倒していく。

 銃を撃ち、剣を振り、魔石を拾って走る。春に学校を卒業した頃にこれぐらいの体力や筋力があれば、GランクスタートではなくてFランクからスタート出来たんじゃないかと思うことがある。ステータスが低かったから、Gランクスタートだったかもしれないけど…。

 

 お昼休憩に一度ダンジョンを出て、コンビニでおにぎりとチキンサラダを買った。最初の頃は食費も切り詰めていたのに、今ではこんな贅沢が出来るようになったと思うと感慨深い。

 チキンサラダは、仁さんと食事をするときにいつも食べているのを見て真似している。ただ仁さんの好物って可能性もあるけど、もしかしたら冒険者に必要な栄養がたくさん入っているのかもしれない。サラダだから体には良いだろうし、ベテラン冒険者がいつも食べているんだからきっと良い物に違いない。


 「そういや、五十嵐さんだけじゃなくて、仁さんにもお世話になってるし、何かお礼しないとなぁ。」


 俺が用意出来るような物って仁さんなら簡単に手に入るだろうし、どんなお礼をすればいいんだろう?これは五十嵐さんに聞くべきか?


 そんな事を考えながら昼休憩を終えると、またダンジョンでコボルト狩りを再開した。



 ☆☆☆



 2階層の周回を続けていると、4周目の途中でレイピアでの攻撃に違和感があった。


 「…っ!?」


 「今、明らかにスピードの乗りが良かったよな…?」


 周りに敵がいないのを確認してから、急いでステータスを確認する。



 ~現在のステータス~

レベル:10

スキル:クラフト Lv.2(アイテムを2個同時に作製できる。)


生命力:55

魔 力:10/100

攻撃力:14

防御力:14+5

敏 捷:14+5

器 用:55

幸 運:55


魔 法:なし

称 号:Gランク冒険者・スライムキラー(防+5)・コボルトキラー(敏+5)



 「よっしゃ~~~っ!やっと取れた~~~っ!!」


 スライムの時とは違い、コボルトはかなり時間が掛かってしまったがようやく取ることが出来た。


 「長かった…もう9月も終わりだもんな。準備期間も入れたらかなり掛かったなぁ。今日はもう帰って五十嵐さんと仁さんに報告しよう!」


 まだ夕方だったが、早く報告したくて急いでギルドへ向かった。


 「あら?東城君、今日は早いわね。もしかして…?」


 「はいっ!コボルトキラー取れました!ようやくクリアできましたっ!」


 「おめでとうっ!これは、お祝いしないといけないわね!今日は定時で上がるわ!仁さん誘って、そこのカフェで甘い物でも食べましょう♪」


 「ええっ!いいんですか!?いつもよくしてもらってるのに、五十嵐さんと仁さんにお返しがしきれなくなっちゃいますよ~。」


 「そんなの気にしなくていいわよ。めでたい時は、お祝いしないとね。」



 その後、帰ってきた仁さんを二人で誘い、仁さんがカフェでスイーツを奢ってくれた。

 その時に仁さんから、以前話をしていたご褒美の話が出てきて、残りのゴブリンキラーを取ったらクランに誘ってくれると言ってくれた。


 クランに入ると年会費が100万円と、納品時の収入から数%のクラン活動費がひかれるらしいが、クランハウスに自室が貰えるのと、クランハウス内の共有の備品庫や武器庫などの物が使えるようになるため、入るメリットはかなり大きい。


 「あと一つ頑張ったらこれから作るクランに入れてやるんだ、それまでに浮気してどっか行くとかはやめてくれな!」


 仁さんが「はははっ!」と笑いながらそんな事を言ってくるが、そこらのパーティーに誘われても、仁さんの誘ってくれたクランのが絶対いいに決まってるので、「絶対仁さんのクランに行きます!」と断言しておいた。


 もう、仁さんには返しきれないぐらいの恩ができてしまったんじゃと思うので、ゴブリンキラーを取って入ることができたら、クランの為に精一杯頑張ろうと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る