第20話

 ~9月下旬~


 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…」


 今日も朝からFランクダンジョンの2階層を走り回っている。下の層へ進めればこんなに走り回らなくてもいいのにと思うときもあるが、一人で4体も5体もゴブリンやコボルトを相手取るのは厳しいので、ここで1,2体のコボルトをひたすら狩り続けている。


 コボルトたちは毎回同じような場所にいるので、リポップする場所が近いのか、その場所の居心地がいいのか分からないが、狩り続けるためのルートを考え、ルート通りに2階層をぐるぐると周回すれば体力の続く限り狩り続けることが出来るようになった。そのおかげもあり、先月から徐々に1日での討伐数が増え続けている。


 「よしっ!居てくれた!」


 いつもの場所に1体のコボルトが居たので、銃をホルダーに戻しレイピアを抜き、そのままコボルトへ向かって突撃する。


 コボルトもこちらに気が付き、こん棒を構えて応戦体勢に入っている。

 こいつらは、真っすぐ突っ込むと武器を構えて立ち止まり、攻撃の間合い内に入ると武器を振ってくるようなので、攻撃タイミングをしっかりと見れば左右どちらかに簡単に避ける事ができる。


 コボルトがこん棒を振るタイミングを見計らい、右側へ避けると、レイピアをコボルトへ真っすぐに突いた。

 

 「…よっ!…ハッ!」


 「魔石は無しか。次々っと!」


 倒したら魔石の確認だけして、レイピアを戻し銃を手に取ると次のポイントへ向けて走り出す。

 

 コボルトが1体なら、レイピアでも素早く戦闘が終わらせられるため、銃の魔力が無くなるまでは、1体の場合はレイピア、2体の場合は銃で1体を仕留めてからレイピアで仕留めるというのを繰り返している。弾が切れると戦闘に時間が掛かるので、残弾数の管理も大切なんだなと学び、休憩を入れるタイミングを工夫している。


 「時間的にもう1周いけそうだな。残り3日だし、最後の追い込みだ!」


 そして、もう1周を回り終えてからギルドへ魔石の納品へ行くと、なんと納品数85個と過去最高の数になっていた。


 「東城君すごいわね!もう、数えるのが大変だわ。」


 五十嵐さんがニコニコ笑いながら褒めてくれて、数が多くて大変だと言われてしまった。

 前の人と違い、嫌味ではなく冗談で言っているのが分かるし、いつも応援してくれているので、担当が変わってよかったなと思っている。


 「時間ずらして持ってきた方がいいですか?」と冗談めかして言うと、「こんなに頑張っているんだから、そんな事気にしなくていいわ。」と笑っていた。


 「そうそう、昨日友達と遊びに行ったら温泉のチケットが当たったのよ。友達と温泉に入ってから帰ってきたんだけど、1枚余ったから東城君にあげるわね。」


 「えっいいんですか?ありがとうございます!…あっ2駅先のアミューズメント施設の所ですね。」


 「ええ、1ヶ月大変だったろうし、終わったらゆっくりとしてくるといいわ。」


 五十嵐さんと仲良くなってきたのもあって、こういう貰い物のおすそ分けをたまに貰えるようになった。いつも貰ってばかりなので、何かお返しをしないとなと思っている。今は毎日ダンジョンに入り浸っているので、一区切りついたら何かお礼をしよう。


 でも、何を渡せば喜ばれるんだろう…女性が喜ぶ物ってわからないぞ?仁さんに相談でもしてみようかな?

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