第18話 side:仁


 東城の成長具合を確認するために、何度か晩飯の時に進捗を聞いてみたが、レベルの上昇がなくてもコボルトの討伐数を日々伸ばしているようで、これなら今年中にはコボルトキラーとゴブリンキラーを取れるだろうと考えている。


 もう一組の冒険者二人も、スライムキラーで防御力の底上げは出来たらしく、かなり順調に進んでいる。こっちの二人に関しては、隣町のEランクダンジョンに行っても浅い層なら問題ないステータスなんだが、東城を一緒に行かせたいのと、ステータスは高いに越したことはないため、今年中はゴブリンキラーとコボルトキラーを取ってもらおうと思っている。


 二人には悪いが、今年の間はFランクダンジョンで体力作りでもしていてもらおう。



 「仁さん、蓮さんと亜紀さんが来られましたよ。」


 「「お久しぶりです!」」


 「おう、元気にしてたか?」


 カフェの店主が連れてきた二人は、Cランクの冒険者パーティーのリーダー達だ。


 「仁さんからの呼び出しなんて珍しくてビックリしたよ。」


 「ホント、ホント!何か強い魔物の素材依頼でもきたの?」


  気安い感じに話しかけてくる二人は、俺が高ランクダンジョンでの活動をやめて、この地元に戻ってきたときに面倒を見てやった冒険者だ。今では立派に育ったもんで、俺よりも上のランクのダンジョンに潜っている。


 「実は来年にクランを立ち上げようかと思っててな!結構あっちこっち行く奴らが多い中で、お前たち二人のパーティーは完全に拠点がここだろ?クランハウス借りて活動した方が色々楽になると思って声を掛けたんだ。」


 「それはめちゃ助かる!ホテル代よりも安くなるし、ギルド施設だから経費にできるし、納品窓口に並ぶ手間も省ける!」


 「だね!きっとパーティのみんなも賛成してくれると思う!…あれっ?でもクランって15人からじゃ?」


 「あと3人は俺が今面倒見てる新人たちを入れようと思っててな。スキルが【クラフト】【運搬】【風魔法】だ。サポート系のスキル持ちが入るメリットは大きいからな。風魔法の嬢ちゃんはステータスの伸びはイマイチだが、スキルがヤバイ成長を見せてやがる。」


 この説明を聞いて二人の目がギラギラし出した。彼らの入っているCランクダンジョンはゴーレムダンジョンで、ドロップ品が全て重さのある鉱石類だ。当然多く回収できないので少しの量しか持って帰ってこない。しかも、その鉱石は鑑定スキルがなければ何の鉱石か分からない。それが運搬持ちとクラフトという二人がいれば、収穫量を大幅に増やすことができる。


 「鉱石をクラフトして不純物を取り除けば軽くなるし鉱石の種類も分かる!それを運搬で大量に運んでもらえば…分配が4人から6人になったとしても儲けが大幅に増えるんじゃないか!?」


 「いやいや、7人でしょ。風魔法の子にサポーター二人を守ってもらわないと。」


 「待て待て!お前ら気が早い!新人だって言っただろ。いきなりCランクダンジョンなんかには連れて行かせないからな!」


 二人が、クランを作ったらいきなりダンジョンに連れて行きそうな勢いだったので釘を刺しておく。


「とりあえず、二人組の運搬と風魔法の新人にはクラン創設の計画を話してある。もう一人は今やってるのが一段落したら勧誘するつもりだ。お前らもパーティメンバーに話をしてOKなら今月中に返事をくれ。ダメなら他を探さないとだからな。」


 その後二人が、あーだ、こーだとクランを作ってからの計画を立てはじめたので、こいつらが入るのはもう確定だろう。あとは専属職員は坊主との縁を繋いでくれた由紀ちゃんにお願いするか。


 蓮と亜紀に話をした後に、そのままギルド窓口に行き受付の由紀ちゃんを呼んでもらう。

 クランの立ち上げを計画している事や、今集めようとしているメンバー、専属職員に由紀ちゃんを付けたいと思っている事を伝えると、由紀ちゃんが慌て始めた。


 「えっ…まだ経験の浅い私でいいのですか?他のベテランの職員もたくさんいますが。」


 「あ~、正直言うとベテラン職員を付けると金がな…。由紀ちゃんみたいな若い職員のが基本給が低い分、クランの負担額が少なくて済んで助かるんだ。最初は由紀ちゃんに苦労掛けるかもだが、今育ててる新人三人が活躍すりゃ、結構な歩合給が付くだろうから安心してくれ。」


 「わかりました。それでは私が担当させて頂きます。創設に必要な書類関係は用意して来週お渡ししますね。」


 「それと、東城なんだが、ここへ納品しているのはポーションだけか?それ以外にクラフトで何か作って納品してたりするか?」


 「級や種類が違うだけで、全てポーション類ですね。もしかしてスキル成長のことですか?」


 「あぁ、スキルは使い方次第で成長の仕方が変わるからな。変な特化の仕方をしてないといいんだが…。」


 「ポーションだけ低コストで作れるような成長をしてしまうと大変ですね。せっかく基本何でも作れるスキルなのに…。」


 「クラフトスキル持ちのポーション職人ってか?ありがたいが、勿体なさすぎるだろ…」


 由紀ちゃんと話をしていて、いずれクランの稼ぎ頭になるであろう坊主のスキルが、知らないうちに変な成長をしていませんようにと祈るのみだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る