第14話「パーティを抜けたい side:望月 めぐみ」


「めぐちゃんおまたせ。次シャワーどうぞ。」



そう声を掛けてきたのは、一緒のパーティで幼馴染の南沙知。今は冒険者ギルドにあるネカフェでペアブースを借りて生活している。一人ずつ借りるよりもペアブースの方が500円安くなるので、ちょっと狭いけど節約のためにも仕方ない。



「さっちゃんお帰り。じゃ行ってくる~♪」



1日の疲れを癒す貴重なシャワータイム。でも最近は考えることがあって、周りを気にせずに考えこめる唯一の時間になってきている。



「はぁ〜…。あのパーティから抜けたいなぁ…。」



卒業と同時に今の4人でパーティを組んだけど、本当はあのバカ二人と組むつもりは無かった。本来は東城君と、もう一人別の男子で前衛の出来る人を誘っていたが、「東城がいるなら他をあたる」と言われてしまい、組むことができなかった。



「あの二人と比べるもないぐらい東城君はいい人なのに…強くないけど…」



学生の頃に何回かパーティを組んだ時も、荷物を持っている沙知によく気遣いしていて、とても好感が持てたし、沙知も東城君の事を好きな感じでもあった。



「いっそのこと、3人で組めばよかったかなぁ?でもそうすると戦力がなぁ…」



卒業時の東城君はGランクになってしまう程の戦闘力の低さ。そして沙知はスキルが【運搬】でどちらかというとポーター要員。私はスキルが【風魔法】だけど、沙知よりも少し攻撃力が高い程度。3人で組んでもダンジョンに潜れるとは思うけど、金銭的に生活が厳しかったと思う。



「うん、さっちゃんの恋は叶わないものだったわけね。」



「あぁ、ダメだ。パーティを抜ける方法を考えるつもりだったのに。さっちゃんと相談するかなぁ。」



ブースに戻ると沙知がパソコンで5層の攻略情報を調べていた。



「ただいま~♪」


「おかえりっ♪」


「情報収集しててくれたの?ありがとっ!」


「男子達が分配比率を変えようとか言ってたから、ちょっとでもお金になりそうな採取物がないかなと思って。」



今まで1日の稼ぎを均等に4等分していたけど、最近になって「前衛の俺たちのが大変だから報酬は多くするべきだ」なんて言い出した。5層に進んでさらに戦闘の回数が増えればきっと強引に多く持っていこうとするに違いない。今よりも受け取るお金が減ると生活が厳しくなってしまう。



「あ~、そのことなんだけどね。今のパーティ抜けない?」


「えっ!?他に行くあてが見つかったの?」


「まだ見つかってないんだけど、もう私たちもレベル10だし、二人でも今のダンジョンの2,3層なら問題ないと思う。この前、東城君はソロで1層のゴブリンと戦ってたけど勝ててたし、それで生活できてるなら私たちも大丈夫だと思ったの。」


「そういえば東城君言ってたね!…あっ!彼と組めばいいんじゃない?♪」


「うーん、仮にそうするとしても、今はやめた方がいいかなぁ…。あのバカ二人がちょっかいかけてきそうだし。」


「そ、そっかぁ…東城君に迷惑がかかっちゃうね。」


「5層のボス目前で抜けるとうるさいだろうから、ボスを倒したら抜けようと思うんだけど、どうかな?」


「うん、そうしよ!移籍先も探した方がいいよね?」


「だね!私も引き抜いてくれる人いないか探してみる!」



とりあえず、二人でパーティを抜ける方針で決まったから、あとは上手く抜ける方法を準備しておくだけだね!それにしても、やっぱり沙知は東城君の事が好きなのかな?


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