第12話「準備とポーション中毒」

コボルトキラー攻略の方法を五十嵐さんに報告したあと、7月に向けて準備に入った。


まずは、必要になるお金の計算。


7月中に最低必要になるお金は約27万円。ホテル代で15万円(1日5000円×30日)食費で約6万円(1日2000円×30日)エーテルで約6万円となっている。


1個100円のFランク魔石のドロップ率は約20%って言われているので、1万匹も狩れば結構賄えるはずなんだが、お金の心配をせずに挑めるように事前に用意しておきたいところだ。生活費以外にも武具のメンテナンス代とかもかかってくるし、何が起きるかわからないからな。


とりあえず、7月までの残り40日あるので、毎日5千円を貯金し20万貯める予定でいる。

朝ポーションを納品して、スライムダンジョンに入り薬草とゼリー集め。

昼過ぎにまたポーションを納品し、その後コボルトで銃の特訓の予定だ。

エーテルの飲み過ぎでお腹がタポンタポンになるのを防ぐために、ポーションの納品は2回に分けることにした。



「よしっ!このペースなら1日に1万5千円は稼げる!ポーチにエーテル4本入れたし、今から銃の特訓だ!」


ギルドに2回目の納品を終えると、30分かけてFランクダンジョンへ向かい、1階層はスルーして2階層で銃の練習を始める。



「とにかく、まずは確実に当てるところからだな。」



コボルトを見つけたらひたすら射撃の特訓をする。

そして魔力が無くなると、エーテルをグイっと飲み、またコボルトを探す。


これを繰り返すこと4回。エーテルが無くなり魔力も尽きたため、次は剣で戦うことにした。レベル上げもしないといけないし、時間の許す限り剣を振り続けた。



「はぁっ!」

ーーザンッ!ーー


「グルルゥ…。」



「おっ、魔石落としたな。こん棒はもう入らないし放置でいいか。」



時間もいい感じに夕飯前ぐらいになってきたのと、リュックの中の魔石とアイテムもいい感じの量になったので、ここで今日は切り上げギルドへ戻ることにした。



「なんだか気持ち悪くなってきたな…」



ギルドの窓口に並んで待っていると、だんだんと吐き気を催すような気持ち悪さが襲ってきた。



(これは早く納品してトイレに行かないと…。)



順番が回ってきて魔石を窓口に置くと、五十嵐さんが慌てた感じで声を掛けてきた。



「東城君!?ちょっと顔色悪すぎるわよ、大丈夫!?」


「並んでる途中から気持ち悪くなってきちゃって…コレ納品したらすぐにトイレに行こうかと。」


「トイレじゃなくて今すぐ医務室に行きなさい!仁さん、この子医務室に連れて行ってくれないかしら?」



五十嵐さんが俺の後ろに並んでいた冒険者に声を掛けると、その冒険者が顔を覗いてきてギョッとしていた。



「おいおいっ!坊主、なんて顔色してんだよっ!由紀ちゃん、コレ俺の納品処理だけ頼むわ。坊主こっち来い、連れてってやる。」


「わたしも後で行くわね。」



そして強制的に仁さんと呼ばれていた冒険者に抱えられ、強制的に医務室へと運ばれてしまった。




診察をしてもらった後、ベットで桶を片手にゲロゲロとしていると五十嵐さんが医務室へ入ってくる。



「東城君、大丈夫…じゃないわね。先生、彼は何か病気ですか…?」


「ポーション中毒ですね。先ほど彼から話を聞きましたが、今日だけでエーテル8本も飲んだらしいんですよ。」


「は、8本ですか!? はぁ…私が一歩遅かったわ…。それにしてもいきなりがぶ飲みしてるなんてね…。」



先生の診断結果を聞いた五十嵐さんは、驚いたと同時に頭を抱えていた。

なんでも、昨日の「レベルが足りなきゃエーテルがぶ飲み」の発言を聞いて、エーテルをたくさん飲むのは大丈夫なのか?と疑問を持ち、上司に確認をしてくれていたそうだ。今夜の納品で来た時に、飲み過ぎは危険だからレベルが上がって余裕が出きるまで【コボルトキラー】は先送りした方がいいと伝えるつもりだったらしい。



「坊主、由紀ちゃんからチラッと話は聞いたが、お前がやろうとしていることは危険過ぎる。ポーションやエーテルってのは危機を回避するための薬で、そうでもないのに1日に大量摂取するようなもんじゃない。それだけエーテルに頼らなきゃならないって事は、それはお前の実力不足だ。【キラー】を狙うより先に、まずは自力をつけることを優先すべきじゃないか?」



仁さんにも注意をされてしまった。そして、俺が一番気にしていた実力不足というところまで指摘をされてしまう。確かに、自力では無理だというところからエーテルを使った攻略法を思いついた。【コボルトキラー】によるステータスアップが欲しくて、気持ちだけが先走っていたのかもしれない。



「そうですね…。ステータスを早く上げることにばかり意識がいっていたかもしれません。」


「まぁ、まだ若いんだ、気長にやればいいんじゃないか?ポーション作れて生活に問題はないんだろ?俺みたいに長く冒険者を続けるコツは、常に自分の力量に合った場所に身を置くことだ!組む仲間もダンジョンもな。無茶すると死んじまうぞ。」


「助言ありがとうございます。…あれ?何でポーション作れるの知ってるんですか?」


「ああも毎日ポーション納品してたらなぁ。4番窓口を使ってる冒険者には有名だぞ?ポーションの金で装備を揃えてる新人のソロ冒険者がいるってな。」


「そんな噂が流れてたなんて知りませんでした…。」


「まぁ本人は知らんわな。これも縁だ、パーティは組めないが何かあれば相談くらいなら乗ってやる。まずは体調をよくすることだな。」



そう言って仁さん達は部屋を出ていき、残った俺は医務室のベットでゲロゲロと一晩過ごすはめになってしまった。


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