第11話「コボルトキラー攻略法 side:五十嵐 由紀」

隣の窓口でスライムゼリーを毎日大量納品して、納品拒否をされていた東城君の担当になって1ヶ月と少し。


毎日大量のスライムを狩り続けたことで【スライムキラー】の称号を獲得し、かなりストイックにポーションの納品をすることでかなりのお金を稼いでいた。今では駆け出し冒険者とは思えない充実した装備になってきている。


5月に入ってからは【コボルトキラー】を狙ってFランクダンジョンに潜っていて、頑張って特訓中らしい。素の戦闘技術やステータスが低いから、これに関してはかなり時間が掛かるだろうと考えていたのだけど…。



「おはようございます!五十嵐さん、今って時間ありますか?」



そう言って東城君は明らかに寝不足な顔で私を訪ねてきた。

朝の職員との引継ぎだけ済ませて、話を聞いてみると【コボルトキラー】の攻略法というのを語り出した。



「魔弾でヘッドショットをすればコボルトは1撃なんです。なので1日380体を倒せば…」


「レベルが10までいけば、1日上級エーテル3本。レベル10以下なら中級を6本で…」


「2階層を回るルートはこんな感じがいいと思うのですが…」



正直、彼の言うことはとんでもないことだった。


エーテルを作って、それを使ってさらにポーションやエーテルを作る。そして中級、上級のエーテルを大量にストック出来れば、銃の腕前にもよるが魔弾の数でゴリ押しできる。ということだった。


これは確かに攻略法だわ。お金さえあれば、東城君のようなステータス値でもコボルトキラーやゴブリンキラーが狙えてしまう。



彼の発想は凄いのだけど。でも何か抜けているわね…。


「東城君、エーテルを使ってポーションを無限作製っていうのは、私も思いつかなくて盲点だったのだけど、それができるなら無理に効率の悪いビックスライムとキングスライムを狩らなくても、買えばいいんじゃないかしら?」


そう、無理にリポップに時間のかかるボス狩りをしなくても、ポーションを売ったお金で中上級エーテルを買えばいい。その時間分をポーション素材集めにしたり、特訓に当てれば成功率もあがるんじゃないかしら?とアドバイスをしてあげた。



「あっ!それもそうか!やっぱり五十嵐さんに相談して正解でした!」



そう言うと、エーテルを必要本数買うためのお金を計算し始めたようで、「最低でもエーテルだけで6万か…ポーション600本ぐらい追加で作ればいいかな。」とつぶやき始めた。


東城君は危険を犯して冒険をしなくても生活できるのに、本当に不思議な子ね。

ほとんどの冒険者は一攫千金を狙ったり生活の為にやっているのに、この子はポーションで生活費は完全に賄えている。

もし私が同じ立場なら、もっとのんびりとスライムダンジョンでお金稼いで雑貨屋でもしていそうね。


私の助言で少し計画が変わったものの、「このスケジュールでいってみよう」と東城君の中で計画が決まったみたいなので、何月にチャレンジするのかを聞いてみた。


「もうそろそろ5月も終わるけど、準備にはどのぐらい掛ける予定なの?」


「6月いっぱいは準備をして、7月1日から30日でチャレンジしようと思います。」


「1ヶ月ちょっとね…今のペースだとレベル10は厳しいんじゃないかしら?」


「その時は中級エーテルをがぶ飲みです!(笑)」


「そ、そう。無理はしないようにね。」



エーテルがぶ飲みって大丈夫かしら?

ちょっと調べておいた方がいいかもしれないわね。

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