第3話「下級ポーション」
声を掛けてくれたお姉さんの所へ行くと、自己紹介をしてくれた。
「五十嵐 由紀よ。よろしくね。それにしてもすごい言われようだったわね。」
「東城 幸です。よろしくお願いします。やっぱりこの量は非常識だったでしょうか?」
「うーん。まぁ向こうの担当者の気持ちも分かるけど、さっきのはあの子がダメね。これからは私が担当になってあげるから、こっちに持ってきなさい。」
「いいんですか?仕事の成績が落ちたり赤字だったりって言われましたけど…」
「時間が掛かるのは確かだから、忙しい時間だけは避けて欲しいかしら。今みたいに手の空いているタイミングを見て来てくれると助かるわ。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
「じゃぁちょっと数の確認してくるから待っててね。」
買取金額の計算が終わるまでの間、待合ソファでレシピ書を確認してみたが、やはり低級ポーションのレシピは載っていなかった。高級ポーションと各級ハイポーションは載っているのに、下級と中級のポーションが載っていないのは何故なんだろうか?
そんな事を考えていると五十嵐さんから声を掛けられた。
「東城君、計算終わったわよ。スライムゼリーと魔石で2,250円。ここから手数料が引かれて2,025円になります。」
「ありがとうございます!また1時間後ぐらいに来るかもしれませんがいいですか?」
「そうね、この後いつもの担当冒険者が来る時間帯だから、2時間後ぐらいにしてくれると助かるわ。」
「わかりました!じゃぁそのぐらいにまた来ます!」
五十嵐さんにアポを取った後、まずは2階の売店コーナーへ向かう。
丸々1フロアがお店になっていて、冒険者アイテムから雑貨までかなりの物がここで揃ってしまう。
ポーション売場へ行くと結構な種類のポーションが並んでいた。この近くのダンジョンには、毒や麻痺などの状態異常にしてくるモンスターもいるため品数が多いらしい。
棚を眺めていくと、空のポーション瓶を見つけた。値段は1本20円だ。
「20円だったか!600円で済む!」
魔力量分の30本を購入し、3階のネカフェでブースを借りたらクラフトの準備にかかる。
「まずは1本試してみるか。…クラフトボード展開。」
そう唱えると、目の前に魔法陣のようなものが描かれた半透明の板が現れた。
その陣の上に、スライムゼリーと薬草を入れたポーション瓶を設置すると両手をかざし魔力を手に集中させる。
「クラフト、ポーション」
そしてスキルを発動すると、スライムゼリーと薬草が混ざり合っていき、1分程で青い半透明なポーションが完成した。
「おぉっ!ポーション作れちゃったよ!!ステータス!」
名 前:東城 幸(とうじょう こう)
レベル:3
スキル:クラフト Lv.1(ダンジョン素材でアイテムを製作できる。)
生命力:20(5)
魔 力:29/30(10)
攻撃力:7(1)
防御力:7(1)
敏 捷:7(1)
器 用:20(5)
幸 運:20(5)
魔 法:なし
称 号:Gランク冒険者
「よしっ!魔力は1しか減ってない!残りも全部作ってくか!」
その後、残っている全ての空き瓶にスライムゼリーと薬草を詰めて、30分ほどかけてポーションを作り終えた。
「これでお金の心配はいらないな!五十嵐さんの言ってた時間までご飯食べたりして時間つぶすかな。」
2時間後、作ったポーションを鞄に詰めて4番窓口に向かった。五十嵐さんは何か書いているようだが、人は並んでいないので声をかけてみる。
「五十嵐さん、今大丈夫ですか?」
「もう大丈夫よ。納品でよかった?あと、ついでにこの担当変更の用紙にサインだけ貰えるかしら。」
そう言って、五十嵐さんが出してきたのは冒険者の担当職員を変更するための用紙だった。なんのためにこんなのが必要なのか分からないが、前の担当はもう嫌なのですぐにサインをしてしまう。
「これでいいですか?あと、コレの買取をお願いしたいです。」
「ええ、大丈夫よ。…ん?これポーションじゃない?東城君作れるの?」
「クラフトスキルを持っていて、作れる素材が集まったので作ってきました!」
「そういうことね。前の担当も、もう少し我慢出来たら素材が揃ってたのに勿体ない事したわねぇ。」
「下級ポーションが30本で3,000円。手数料が300円で2,700円になります。」
「ありがとうございます。これから朝と夜に持ってきてもいいですか?素材はあるんですけど、魔力が少なくて一度にこれだけしか作れなくて。」
「この量ならすぐ終わるし、いつでも持ってきていいわよ。朝は私いないから、別の職員が担当してくれると思うわ。」
「わかりました!作ったらまた持ってきますね!」
この数の納品ならいつでもいいと言われたので、これから毎日納品しようと思う。朝晩2回で4100円。これだけで1日の食費とネカフェ代はなんとかなる。あとは魔石をいくつ手に入れられるかで装備の更新が早まる計算だ。
「これはやる気が出てきたぞ!でも装備を更新したらFランクダンジョンにもいけるだろうし、そしたらポーションが作れなくなるな…。今月中にゼリーを集めまくっておくか!薬草はFランクダンジョンでも採取できたはずだしな!」
これからの方向性が決まると、2階で空き瓶を購入してネカフェブースに戻る。
今日は早く寝て、明日ポーション作りとスライム狩りに行こう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。