第2話「ポーションのレシピを発見する」

平日のスライムダンジョンは、ほとんど人がいないために薬草が独占状態だった。

休日は学生が小遣い稼ぎに来たりしているが、平日にスライムダンジョンに潜る人はほとんどいない。薬草摘みを始めて1時間ぐらいで結構な量になってきた。


「もう袋の半分ぐらいか。いっぱいになったらスライム狩りに変更だな。」


次の薬草の採取ポイントまで移動していると、スライム数匹が跳ねていたのでそれを倒してスライムゼリーと魔石を拾うと、クラフトスキルが反応した。


「おっ!?新しいレシピか?なんでこんな所で?」


手に持っているアイテムでクラフトできる素材が揃うと、レシピを知ることができるが、今手に持っているのは薬草袋とスライムゼリーに魔石。


「スライムゼリーと薬草で下級ポーションが作れるのか!学校で買ったクラフトスキルのレシピ書には書いてなかったぞ!?」


学校に居た頃によくクラフトしていたのは、ゴブリンやコボルトが落とす「石ころ」「木の棒」「腰巻」などのいわゆるゴミと呼ばれるアイテムたち。


こういった物でも、クラフトスキルがあれば、「石の剣」「石の槍」「松明」などの作製素材となる。まぁ、どれも使われる事は少ない。ちなみに俺が今使っているのは在学中に作った石の剣だ。


下級ポーションの値段は1本100円だ。ギルドへ納品だと手数料で1割取られるが、元が20円にしかならない素材だ。空のビンを買うとしても、ポーションを売ればこの1週間の収入なんてすぐに越えるはず。


「これは、凄いことを発見してしまったな。でもなんでこんなにいいレシピがレシピ書に載っていなかったんだろ?」


早速帰ってポーション作りを試してみたかったが、空の瓶を買うお金が必要になるのでスライムゼリーが200個、薬草が100本になるまで採取をすることにした。


「ふぅ、今日はこのぐらいでいいだろ。魔石も今日は25個も落ちたし言うことなしだな。」


売却分はスライムゼリーと魔石で2,250円。これで1,000円分ポーション瓶を買ってからネカフェに入りポーション作り。仮に作製に失敗しても、料金が上がる前にネカフェを出れば使用料1,000円で済むからなんとかなるはずだ。


「完璧な流れだ!これで資金を増やしていけば、冒険者として活動していける!」





ルンルン気分でダンジョンから帰り、冒険者ギルドの3番窓口へ並んだ。


ギルドでは窓口の担当職員が決まっている。基本的に冒険者の登録を受け付けた職員がその冒険者の担当になり、仕事の依頼斡旋やアイテムの買取を行ってくれる。休暇を取っていたり、不在の時でもいつもの窓口に行けばその職員と同じ班の職員が対応してくれるため、特に問題はないシステムになっている。


「お待たせ致しました。…ッチ!…」


(えっ?顔を合わせたら舌打ちされた!?)


「えっと、買取をお願いしたいんですけど。スライムゼリーと魔石です。」


「ハァ…毎日毎日スライムゼリーばかり…。」


「すみません、いつも数が多くて…。」


「ええ、本当に迷惑です。東城さんの担当になってから1週間。先週の私の成績はガタ落ちです。時間を掛けて大量のゼリーを数えても金額は数千円。ギルドの取り分は数百円。赤字ですよ赤字!たまに来る小遣い稼ぎの学生たちならともかく、毎日とか辞めて欲しいです。」


「本当すみません。これからはゼリー以外も納品できるので。」


「いえ、結構です!スライムダンジョンですし、どうせ薬草でしょう?また手間が増えるだけじゃないですか、質が悪い!もうこの窓口には来ないで下さいっ!」



そう言って窓口からスライムゼリーと魔石の入った鞄を突き返されてしまった。

まさかの買取拒否を受けてしまい、3番窓口から少し離れたところで呆然と立ち尽くしていると、それを見かねたように隣の4番窓口のお姉さんが声を掛けてくれた。



「そこの君。今こっちの窓口手が空いてるから買取手続きしてあげるわ。」


「あ、ありがとうございますっ!」


買取をしてくれるというので、慌てて4番窓口へ素材を持っていくのだった。



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