寮暮らしと物語の始動

「住む寮がない人はこれで全部か」


もうおおよその人が測定しおえたのか、先生はそういった


見渡してみると、ちょっと離れたところに主人公とヒロインたちがまばらになって集まっていた。


「はい、恐らくは」


「そうか、それじゃあお前らが新しく住む寮を紹介する。ついてこい」


私たちは、歩き出した先生の後ろについていった。


「ここが、今からお前らが新しく住む寮だ。お前ら、他の寮とちぃーとばかし離れてるからといって羽目外すなよ?」


そういうと、先生は来た道を戻っていった。


私たちは案内された寮の方を見た。


この寮は他の寮から少し離れた場所に建てられており、外観からはまるで普通の家だった。


このままここに立ってても仕方がないので寮の中に入っていくと、


「おや、もう来たのか」


そこには、白い髪の少女がいた。


間違いない。彼女は攻略ヒロインの一人、則本子安だ。


「この寮の寮長をしている則本子安だ、とは言っても昨日までは他の寮生はいなかったんだが」


「初めまして、私はロコウ・メアリル。ロシアと日本のハーフだよ」


「僕は安崎礼二。ロコウの幼馴染です」


「羽沢湊なの、よろしくなの」


他の面々も次々と挨拶をしていき、終わった後に則本が寮に関する説明をする。


「この寮は他の寮と違っていてね、食堂も清掃員もなくてね、共有スペースの掃除や洗濯、朝食や夕食も自分たちでやらなければいけないんだ。まあその代わり規則は少し緩いし、費用も少し安いんだけどね」


「門限はほかの寮と同じ22時ですが連絡があれば宿泊も可能だ」


「にしてもここは設備がいいし、きれいだな」


加賀は辺りを見渡しながらそういった。


「確かに寮にしては結構いいのそろってるよな。あのテレビも」


続けて虎座もいった。


「前ここは、単なる家だったんだが、とある事情があって学校が敷地ごと買い上げることになったんだ。けれど、その話に尾ひれがついた結果、ここに住む人が殆どいなかったんだ。それを見かねた理事長がここの設備を変えたんだけど、結果は変わらず。あの放火事件がなければ、この寮に一人寂しく暮らしていたよ」


「なんで一人で住むことになったんですか?」


恐る恐るといった感じで佐都が則本に質問している


「いくら住む人がいなくても、掃除をする必要があるからね、3ヶ月に一度ここに掃除する代わりにここに住める他、寮の費用を一部負担してくれるんだ」


「つまり、あなたも来たばっかりってこと?」


「まあそうなるかな、でも前の担当から話は聞いてるから掃除用具とかの場所はわかるよ」


「じゃあほかの人に聞く必要はないってことか」


「じゃあちょっと早いけど夕食にしようか。今日いきなり寮生が増えるって聞かされたから出前だけど」


そのあと、私たちは頼まれた出前を食べた後、寮割り当てを話し合って決めたりした。


決めた割り当てに従って私たちはそれぞれの部屋に入っていった。






私は今後の護衛計画をいま立てている分を伝えるために羽沢さんを部屋に呼んだ


「さて、早速私の部屋に来てもらったわけだけど。羽沢さん、今週何が起こるか分かる?」


「今週どころか、4月は主人公とそのヒロインの顔合わせと世界観の説明程度しかストーリーはあまり進まないの。だから5月から本格的にストーリーが始まるの」


「そうなるとノーヒントで4月から5月をどうにかしないと行けませんね」


礼二は少し困ったような顔でいう。


「そうなると5月までにあるていど仲良くなってないと、ヒロインを介入者が送ってきた刺客から守りにくくなるね」


「だからある程度関係性を構築する必要が合ったんですね」


「そういうこと」


「じゃあ今後はヒロインたちをと仲良くなるために、そして護衛しやすくするために自然に近くにいるってことでいいの?」


「そうだね、いくら5月までストーリーがほぼ進まないとはいっても、それまで刺客がこないわけないからね」


「元に僕たちは雪宮さんが刺客に襲われてる所は見ましたから」


そう言われて、私は雪宮を襲ったガリガリな男を思い浮かべた。


彼があのまま刑務所中でじっとしてるといいけど、油断してると足元掬われかねないし、今度様子を見に行ってやばそうなら何かしら考えないと。


「それってずっと一緒にいるっていうことなの?」


「学校内だけでいいと思うよ、寮に刺客が来る可能性は低いし、わざわざ人の目警刺客を消しかけるよりも、学校で襲った方が油断させやすいからね」


「それに外は個別ルート入らないと二人っきりで出掛けることはないの」


ふと、礼二が疑問を口にする


「あれ?そういえばみんなは娯楽とかってどうしてるんだろ」


「スマホって何でも出来るの」


「あー、買い物から読書、動画まで見れるからね」


「そんな便利なんですかスマホって?」


「今度教えてあげるね」


「そういえば気になってたけど、ロコウさんって何でそんなに電子機器に詳しいんですか?礼二さんは何も知らないんですか?」


「まあ私と礼二とは別の異世界で育ったんだよね。だから私と礼二の知識には差があるんだ。あれ?でも礼二って前救った異世界でスマホ使ってなかったっけ」


「僕は通話と検索にしか使ってなかったので、スマホが娯楽にも使えるとはしらなかったんです」


「あー、あっちの世界だと結構忙しかったし、他にも娯楽がいっぱいあったからねー」


そういえばエロゲーとかのいわゆるアドベンチャーゲームをほとんどやってなかったね。


礼二がRPGやってるのを横から眺めたり、協力アクションゲームとかしかやってなかったからね、色々勉強しないと、二つの意味で。


「今度エロゲー買ってみるの。だからみんなでやるの?」


「やろうやろう!礼二も一緒に!」


「ええ...ぼくもやるんですか...」


「まあまあ、これも経験だから」


「経験になるんなら、まあ。それに、エロゲーについて何も知らないとちょっと困りますもんね」


「決まりだね、じゃあそろそろ寝よっか。明日早いし、決めたいこと決めたし」


「わかったの、おやすみなの」


「おやすみなさい」


それぞれがそれぞれの部屋に帰っていった。


私はさっさと寝床につくと、今後のことについて考えることにした。


元のストーリーを壊すのではなく、壊されないように直す。あらためて口にすると、ちょっと目標がわかってきたかも。私たちの初めての試み、成功するといいけど。


私はゆっくり目を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る