異世界転移者と異世界転生者

「さてと、これで大丈夫かな」


私は気絶しているガリガリ男を地面に横たわらせると、炎の異能を持つ男と戦っているであろ


う雪宮の方を見る。


すると、炎の異能を持つ男が倒れており、雪宮には焼け跡一つない状態だった。


倒せるとは思っていたが、まさか無傷だとは思わなかった。


「みなさん無事ですか?」


そう考えている間に警察が来たらしく、私はそちらを振り返る。


「ええ、放火犯とその仲間は全員捕まえたよ」


「そうですか、ご協力感謝します。身柄はこちらで預かっておきます」


警察は、放火犯とその仲間を連行していった。


「これで一件落着、ってわけには行かないね」


「はい、一部とはいえ寮が燃えてしまいましたから、教室で待機と先生は言っていました」


「とりあえず、教室に行ってみる?」


「行きましょうか」


私たちはそれぞれの教室の方に向かおうとした。すると、


「どういうことなの?この世界のストーリーにはあのガリガリの男はいなかったはずなの」


と小さな声が聞こえた。


私は声のした方を振り向くと、そこには私たちと同じ制服を着たピンク髪の女の子がいた。


その子は不思議そうな顔でこちらを見ながら立っていた。


さっきの発言からするとおそらく彼女が転生者だろう。


そうこうしているうちに声の主が近づいてきた。


「あなたたちもしかして、転移者なの?」


「うん、正確にいえば私たちは自分の意志で異世界から転移してきたんだけどね」


そういうと女の子は納得した表情で


「そうなの、私は羽沢湊、異世界転生者なの。あなたたちの名前は?」


「私はロコウ・メアリル、異世界転移者だよ」


「僕は安崎礼二、ロコウと同じ異世界転移者です」


お互いに自己紹介を終えると、私はある質問をした


「そういえば、元のストーリーがどうとか言ってたけど、それってどういうこと?」


羽沢は少し疑うような眼差しをこちらに向ける


「信じてくれるの?」


「もちろん、この世界の神様も、同じこと言ってたからね」


「神様にあったの!?」


「うん、神様から、この世界はエロゲーの世界で、そこが大変なことになってるからどうにかしてくれって頼まれてるんだ」


「しかも神様に頼み事される間柄!?」


「僕たちは神様からのお願いごとを聞く仕事をしてるからね」


「うう、頭がパンクしそうなの...」


「まあ私たちが知ってるのは、このエロゲーの登場人物の顔と名前だけで、元のストーリーは知らないけどね」


「え?元のストーリーを知らずに雪宮と共闘せず、元のシナリオに存在しない雪宮に襲い掛かって来たガリガリ男を、倒したの?」


「うん、下手に雪宮と共闘するとストーリーが変わる可能性が高いからね、ストーリーを知っている人がいる段階で、下手に変えたくなかったから」


「その考えはありがたいの、ならストーリーを知らなくても問題ないんじゃないの?」


「その元のストーリーが知りたいんだよ。どれが倒してもストーリーに影響を及ぼすか、及ぼさないか、見極めるために」


「分かったの。私の記憶だと、覚えていることと覚えていないことがあるけど、大丈夫なの?」


「大丈夫だよ」


「なら、今日からしばらく一緒についていくの。ストーリーを書いたメモはまたMAINに送るの」


「「MAIN?」」


私と礼二の声が重なった


「MAINっていうのはね、スマホにあるチャットアプリなの。今後も使うから、インストールしたほうがいいの」


「分かった」


礼二は無言でうなずいた。


礼二はスマホの扱いすらわからないから後でしっかりと教えないと。


「じゃあ、教室へ行きましょう。みんなもうすでに行ってますし」


「そうだね」


「うん」


三人はそれぞれの教室へむかった。

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