30話有るのに1分以内に10話ファボられた時の純情な感情
大きな石垣がグルリと辺を囲い込む街の入り口に、2人の男が立っていた。
2人は満身創痍だった、痩せほそり、体には真新しい傷があちこちに付いている。衣服は汚れ、さらには所々破け、2人の旅路が壮絶を極めた物だと言う事を物語っていた。
1人は冒険者、麻生雄一、その隣の中年は雄一を守護する幻獣、伊藤さんである。
「着きましたな麻生氏」
「ええ…着きましたね…」
「しかし、なかなか大変な道のりでしたな…」
「ええ、まぁ、四日ですからね…」
「街道を進む事、四日…強大な敵に襲われ何度も死にかけましたな…」
「強大な敵ですか…」
「さしもの私も一時はどうなる事かと…」
「強大な敵…出てこなさすぎでしたよね…」
「はて…」
「我々が戦ったのは1に【飢え】、2に【乾き】、3に【橋のかかっていない崖】、4に【悪天候】こんなもんじゃないですか!」
「はっはっは、特に3番は参りましたな!落ちましたし!」
「落ちましたし!じゃないですよ…ファンタジー異世界の街道を4日ですよ?4日!4日も歩いてモンスターやら野党やらとエンカウントしないってどう言う事ですか!?」
「安全なのは良い事ではございませんかぁ!はっはっは!」
「何のために居るんだぁぁ!あんたぁぁ!」
「さて、何故でしょうな…」
「誰か変わってくれ…誰か…」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「とにかく、宿を取りましょう!冒険者が街に着いたらまずは宿です!」
「いやいや、麻生氏、普通は冒険者ギルドとかでは?」
【チッ】雄一の舌打ちが響く
「あのですね、限界なんです、限界!わかります?死んで、蘇って、こちとら四日間、どんぐりと野草(と言うか雑草)しか食べてないんですよ!そもそもね、スポーンする場所おかしくないですか?移動魔法とかアイテムとか無いのに徒歩丸4日の距離に転生させます?あの女神マジで湧いてんじゃないですか?大体この街から街道を通って我々がスポーンしただだっ広い草原まで完全に一本道でしたよね?」
「はぁ、確かに…」
「我々が歩いてきた道は一体何処と何処を繋いでたんですかっ!!途中に民家も商店も無い永遠と4日の道のりを!街道整備した奴計画性無さすぎるだろ!誰ともすれ違わなかったぞ!この世界に税制システムあんのか知らんけどとんでもねぇ金と労力の無駄遣いだよ!」
「我々は助かりましたが…」
「ならもうせめて橋掛けといてくれよあの崖……とにかく!宿です!宿を取りに言って飯を食いましょう!話はそれからです!」
「致し方ありませんな!その様に致しましょう!!」
ーーー宿屋ーーー
「え?」
「え?」
宿屋の店主と雄一は揃って目を丸くした。
「と、泊まれないんですか?」
「あ、当たり前てもんですよ旦那ぁ!、だって無一文なんでしょう?無料で泊まれる宿屋なんて商売になりませんぜ?」
「え、なんかこうシステム的に泊まるを選択するだけでセーブと回復が出来る的な…ポ○モンセ○ター的なアレは…」
「なぁに言ってんのか分かりませんけどねぇ、こっちも商売なんで!悪いんですが帰って貰えますか?客がつかえちまう!」
【ば、ばかな…】
雄一は額に冷や汗が浮かび上がるのを感じた
【つまり要約するとこうだ…この世界は生前の世界とほぼ変わらない社会システムが構築されている。金が無ければ寝れないし食えないし飲めないのだ…つまり俺はあれか…異世界に無一文で投げ捨てられたと言う事なのか!?異世界じゃなくて外国でも普通そんなの発狂するぞ…あのクソ女神どうしてくれんだコレ…】
狼狽する雄一の後ろから伊藤さんが肩に手を乗せてきた。
「仕方がありませんなぁ、麻生氏、ここは私が!」
「伊藤さぁん!まさかお金をもって…」
「精一杯頼んでみましょう!」
【頼むから帰ってくれ】宿屋の店主の言葉は愛想もクソもなく火の玉ストレートだったが、雄一は通報されないだけマシだったと思う事にした。
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