俺への処分と真人さんとの会話

 俺は新たに就任した静香学園長と共に学園長室にいる。

 まぁ、あの様子を本人ではなく護衛が見ていたというのだから、俺にも処分を下すつもりだろう。

 元々、退学されることを見越してやったのだから、後悔はない。

 

「それで俺の処分は?」


「いきなりそこにブッ混んでくるのね」


「用件は早い方がいいので。 後悔はしてないので」


「柚希義姉さんや兄さんからは訳ありだと聞いてたけど……。 まぁ、いいか。 あなたの処分は、一週間の停学ね」


「軽いですね、俺への処分は」


 先に教えてもらった俺の処分は、どうやら一週間の停学。

 自分が考えてたものより、遥かに軽い処分だった。


「あそこまでは流石にやり過ぎたけど、言ってる内容は理解できるからね。 むしろ、その前の殖栗あくりの行動が酷すぎたからね」


「皐月の席を排除して、クラスからも外そうとしていた事ですか?」


「そうよ。 しかも学校の用具を勝手に大型ごみに出したんだから、相当の重い処分にさせてもらったのよ」


「ああ、確かに……」


 俺の行動もやり過ぎた感があるようだが、その前の殖栗あくりの行いを護衛が見てたらしく、静香学園長にも伝わったようだ。

 奴は皐月を必要以上に差別しただけでなく、学校の用具を勝手に大型ごみに出したのだから、かなりの重い処分になるようだ。

 学校の用具を勝手にゴミにだしたら、そりゃあそうなるか……。


「クラスの子、特に皐月ちゃんには新たに担任になる人から伝えるから、今日はひとまず下校しましょうか。 課題も用意しておくから」


「分かりました」


殖栗あくりの処分の内容は、夕方に貴方の家に来るから、そこで話しましょうか」


 今日はここで俺は下校することになるようだ。

 皐月には幸村に任せるしかないようだが、そこは仕方がないか。

 自分が蒔いた種だし。

 それに、奴の正式な処分の通達がまだ伝わってないようなので、夕方に俺が住んでる家に静香学園長が来る時に話すようだ。


「裏口まで送っていくわ。 皐月ちゃんを庇ってくれてありがとうね」


「いえ……」


 静香学園長に裏口まで送ってもらい、そこから自分の住む家に帰ることになった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ん? 伊波君?」


「あれ、真人さん?」


 裏口から自分が住む家に戻る最中に、真人さんに遭遇した。

 まさか、こんな所でエンカウントするとは思わなかったな。


「真人さんは、ジョギングですか?」


「ああ、今日と明日は仕事が休みだからね。 それより伊波君はなぜここに? 学校は?」


「実は……」


 俺は真人さんに停学になった事と、そうなるまでの顛末を打ち明けた。


「あの教師、そこまでしたのか。 学校の用具を大型ごみに出してまで皐月を……」


「奴は、最後まで皐月は美月のクローンでなければならないと言ってましたね」


「それを否定する皐月をクラスからも排除しようとしていたと……。 それで君がキレてあの教師の……」


「まぁ、そんなもんです」


「それで一週間の停学か。 静香もちょっと厳しいかなぁ」


「元々俺にとっては軽い処分だと思ってます。 退学を覚悟してやった事なので」


「君も君で捻くれてるな。 まぁ、皐月みたいに迫害された事があるからな」


 顛末を聞いた真人さんは、表情を歪めていた。

 まさか、娘の一人をクラスから排除してでも美月のクローンにならなければばらないと言い続けたのだから。

 俺も俺で、皐月みたいに比較されて迫害されたから、捻くれてるのは自覚してる……つもりだけどな。


「それで、その事は今の家族には?」


「報告済みです」


「そうか……」


 停学の件については今の家族にも報告済みだ。

 やりすぎた事に関しては申し訳ないと告げたが、そこについては叔父さん達は責めなかったようだ。


「それで、あの教師の処分はどうなったんだ?」


「夕方に静香学園長が来るので、その時に話すようです」


「それだけ重いという事か」


「多分」


 長い話にもなりそうだと思われるので、おそらく家で話すのだろうが、学園周辺の優生思想の住民が聞き耳を立てる可能性があるのかもと、今頭を過った。

 

「そろそろ家に戻らないとな。 じゃあな、伊波君」


 そう言いながら、真人さんは走っていった。

 別のルートから戻るのだろうか?


「さて、一週間はどうしようか」


 俺はそう考えながら、家へと帰るのだった。

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