屋上での一時
午前の授業が無事に終わり、昼休みになった。
「伊波君、お昼食べよう」
「ああ、いいぞ。 屋上でいいか?」
「うん、そこでいいよ」
皐月から昼食を一緒に食べようと誘ってきたので、一緒に屋上へ向かう。
「お、光輝に皐月さん」
「一緒に屋上かしら?」
「お前らもか。 というか、最近一緒だな。 カップルかよ」
「悪いかよ。 俺達も屋上で昼食さ」
「ま、否定はしないわよー」
「否定しないんだ……」
途中で購買からパンを買った幸村と委員長に遭遇し、一緒に屋上に行く事になった。
しかし、この二人は最近一緒にいる事が多いんだよなぁ。
付き合ってるんじゃないかと突っ込んだが、委員長も幸村もあまり否定しなかったらしく、皐月も苦笑していた、
「それじゃあ、いただきます」
時間も惜しいので、早速昼食を摂ることにした。
幸村と委員長は購買のパンなのだが、俺と皐月はお弁当だ。
「伊波君と皐月さんのお弁当、おいしそうね」
「俺が作ったわけじゃないぞ」
「私もお母さんが作ったお弁当だから」
委員長が俺と皐月の弁当を見てそう言った。
確かに美味しそうだが、俺は叔母さんに作って貰ったものだし、皐月は柚希さんに作って貰ってるものだ。
美味しいに決まってるだろう。
「そういう幸村と委員長はサンドイッチと水か?」
「お茶は微妙に利尿作用があるからね。 教室に戻るまでにトイレに行くけど、緑茶の成分も馬鹿にできないしね」
「まぁ、そういうこった」
「私はお茶を飲んでるけど、そこまでではないけど、体質の差なのかな?」
微妙について行きにくい話題で盛り上がってしまった。
確かに利尿作用は、
奴が別の学校で別の女子生徒を公開処刑じみた形で失禁させて登校拒否に追い込んだという話も幸村から聞いているからな。
「伊波君」
「ん?」
そんな事を考えながら弁当を食べると、皐月に声を掛けられた。
不意に皐月の方に顔を向けると……。
「ほいっ」
「むぐっ!?」
「「おおおっ!!」」
いきなり皐月が自分の弁当から玉子焼きを俺の口に押し込んだ。
それを見た幸村と委員長も皐月の行動に驚きの声を上げていた。
何事かと思って、口に放り込まれた玉子焼きを食べてから、皐月に聞いてみた。
「皐月、今のは何のために?」
「考え事してるから、どうしたのかと」
「ああ、ちょーっとついて行きにくい話題に入ったからなぁ」
「そっか。 でも、今の状態じゃそれも重大だしね。 伊波君も目をつけられちゃったし」
「それでもこいつは奴の脅しよりも強いからな。 歪んだ考えは許さないのさ、光輝は」
「色々あったからな」
「ふーん。 ほい、もう一つ」
「むぐっ!?」
また皐月に玉子焼きを押し込まれた。
考え事をしてた俺が悪いんだけど、なんか皐月の行動が大胆すぎるっていうか……。
「私だって両親や信頼できる近所さんに相談してるんだし、伊波君も一人で抱えちゃだめ」
「わかっちゃいるが……」
「ああ、皐月さん。 こいつには話せない事項があり過ぎてな。 相談役は俺が受け持ってるんだ」
「へぇ、幸村くんもやるねぇ」
やはり皐月も違和感に気付いてる。
それでも幸村が言うように、言えない事情が多すぎる。
俺が転生者だって事や、前世やこの世界で受けた毒家族の迫害の悪夢を見るようになったとか。
だが、いい加減にある程度の事項は言えるようにならないと、俺の心が保たなくなってるのも事実。
家族間で比較され、差別を受け、食事をろくに与えられなかったという経験が前世だけでなく今の世界でも経験してしまってるため、それがトラウマとなってしまってるからな。
せめて今の世界での事を吐き出さないと、昨日の夜みたいに苦しむ羽目になりそうだ。
「あ、そろそろ予鈴がなるわね。 トイレに行ってから教室に戻りましょうか」
「そうだね。 話しながらご飯を食べてると時間が経つのがはやいよね」
委員長からそろそろ予鈴がなるから、トイレに行ってから教室に戻ろうと言った。
俺達は四人でトイレを済ませてから教室に戻った。
そして、今日はホームルーム以外は、奴に関わらなかったので午後の授業も無事に乗り越える事が出来たのだった。
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