柚希の指摘と四人での登校
「伊波君、おはよう」
「おはようなのです、伊波君」
「おはようございます」
雪菜と一緒に待ち合わせ場所に行くと、皐月と柚希さんが待っていた。
挨拶をしてきたので、俺も挨拶をしておく。
何せ、挨拶は大事だしな。
「じゃあ、今日も皐月ちゃんをお願いするのです」
「分かりました」
「あと、伊波君。 顔色が悪いのです。 大丈夫ですか?」
「っ!?」
ひとまず皐月を任された俺は学校に向かおうとするが、そこに柚希さんが俺にこう尋ねて来た。
ちゃんと顔を洗ったりして引き締めてきたはずだけど、違和感を柚希さんに見抜かれたのか?
「いえ、大丈夫です」
「そうですか。 無理はしてほしくないのです。 皐月ちゃんからも伊波君の違和感に気付き始めてるので」
(皐月にもか……)
出来るだけ皐月には、今の俺の現状は話さないようにしようとしていた。
今の世界での家族での迫害を受けたことくらいは言ってもいいが、前世のレオナルド・レリックだった頃から続いている迫害という名の悪夢まで言ったところで、信じてくれないだろうし。
こんなのは、オタクの幸村だからこそ、冗談半分で打ち明けれた。
転生系のラノベに疎そうな皐月や柚希さんにまでこんな事は話せないのだ。
「伊波君は一人で抱えている節が見受けられたのです。 私から見てもそこが心配なのです。 余計なお節介なのかも知れませんが」
(一人で抱えてる……か。 確かにそうかもな)
そこまで見抜かれているのか。
柚希さんには敵わないか……。
俺は観念して柚希さんには話すようにしよう。
「柚希さんには夕方に話します。 今の皐月には話せませんが……」
「分かりました。 その時を待ちますね。 じゃあ、改めて皐月ちゃんを頼みますね」
「はい」
柚希さんとの話を終え、俺は皐月と雪菜の方へ向かった。
あの人、本当に只者じゃないよな。
まさか細かい違和感まで見抜いていたのだろうか……。
幸いにも昨晩見た悪夢は、今の世界での毒家族による迫害の夢だったのでそれを打ち明ければいいだろうが……。
皐月にも話すと、皐月が俺に遠慮してしまう可能性が強い。
そうなったら、彼女がまた
せっかくの断ち切れそうな流れを引き戻させるわけにはいかない。
「伊波君、お母さんと何を話してたの?」
「ちょっとした世間話さ」
「そっか。 じゃあ、行こうか伊波君」
「ああ。 もうすぐ幸村や委員長も来るみたいだしな」
「じゃあ、お兄ちゃんに皐月お姉ちゃん、頑張ってね」
「雪菜も気を付けろよ」
「またね、雪菜ちゃん」
雪菜と別れて、皐月と二人で学園に向かう。
途中で幸村と委員長と合流し、四人で一緒に登校となる。
さて、皐月にも朝のメールで幸村が教えてくれた情報を伝えてみようか。
丁度幸村もいるし、補足をしてくれるだろうから。
「そういや皐月は幸村からのメールを見たか?」
「うん。 まさか静香叔母さんが学園長になるなんてね」
やはり幸村は皐月にもメールで送っていたようだ。
楠家の本家の当主の妻は、
「本来の九重学園を運営しているはずの九重家が
「マジさ。 踝家の優秀な探偵一家による捜査の結果さ。 奴らは九重家が楠の分家であることを知って、思想の邪魔になると思って仕掛けたようだ」
「そこまで優生思想を浸透させたいの……!?」
「ああ。 奴のバックにいる政治家の力を借りてでもな。 だが、それも終わろうとはしてるがな」
「予測でその政治家が落選の可能性があるって奴か」
「そうだ。 踝の分家と楠の別の本家でこの地区の2議席を確保できる情勢だ。 それでも油断はならないがな」
確かに本投票まで油断はならないが、現時点の予測で
この流れを何としても維持したいが、昨夜の悪夢の影響で感情が爆発しそうな感じはある。
「お、着いたみたいだ。 幸い今日は奴が関わる授業科目はないから、安心して授業を受けられるかもな」
「そうあればいいがね」
「あの教師の事だから、ねじ込んできそうだけどね」
四人で話をしているうちに、九重学園に着いたようだ。
一応、時間割的には
美月を称え、皐月を見下すために。
そうさせないためにも今は俺達で皐月を守らないとな。
奴の……殖栗の歪んだ思想から……。
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