美月との溝と殖栗にまつわる話
「おはよー」
「おお、光輝。 皐月さんと一緒とかお熱いねぇ」
「からかうんじゃねぇよ、幸村」
皐月と一緒に教室に入ると、真っ先に幸村が声を掛けてきた。
相変わらずふざけた事を言う幸村だが、
皐月は皐月で、さっきの幸村の発言で顔を真っ赤にしてるよ。
「皐月……」
「何?」
そこに誰かが皐月に声を掛けてきた。
我に返った皐月は、一転して憎悪を露にしてその声の主に視線を向けた。
「あの……」
「話すことなんてないよ、美月」
皐月は、声の主である美月に重いトーンでそう告げた。
話すことなどない……と。
「さ、皐月さん……」
「あの
かなり怒気の強い声でそういい放つ皐月。
美月はショックで俯いており、多分美月の彼氏だろうと思われるクラスメイトの男子はおろおろしている。
確か、彼氏の名は
こいつも
(こいつぁ、重症だな。 ここまで拗れちまうとは。
他のクラスメイトも雰囲気が重い。
これも
幸い多数のクラスメイトは、奴を嫌ってるからまだマシなんだろうが。
「おやおや、みんなして無能の娘を囲って何してるんだぁ?」
不快な声と共に
俺を始め、幸村や美月と門田以外のクラスメイトは、奴を睨んだ。
「皐月さんを悪く言わないで!」
「嫌だね。 無能を無能だと言って何が悪い?」
「決まってんだろうが……!」
「ぐあっ!」
委員長が奴に皐月を悪く言うなと言ったが、奴は開き直って、無能と言って何が悪いと切り返した。
それにキレた俺は、奴の胸ぐらを掴んでいた。
「双子だってなぁ、それぞれの個性ってものがあんだよ! それを否定して皐月を虐げるんじゃねえよ!」
「き、貴様……!」
「悪いが、さっきの発言のシーンを録画して拡散しておいたぜ。 それでも開き直れるなら、開き直ってみな」
「う、ぎ……」
幸村はさっきの
多分、柚希さんにも知れ渡るだろうなぁ。
俺は、奴を放り投げた。
「行きましょう。 奴のホームルームとかボイコットしましょう」
「ま、待て!」
「いい加減気づけよ。 俺達はてめぇが大嫌いなんだよ」
俺と幸村を始めとしたクラスメイトは、俯いたままの美月と門田を置いて教室を出た。
向かう場所は、いつもの所だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「いつもすみません、金沢先生」
「構わないわ。 殆どの教師達もあの
「そうなんですね」
「でも、私を始めとした教師達も上級生もあなた達の気持ちは理解してるから、
「はい」
「じゃあ、ホームルームを始めるわ」
俺達が向かったのは、視聴覚室。
そこで保険医の金沢先生の下で、ホームルームを始めた。
彼女も
他の教師達もそうだが、どうやら
だから、辞めさせたくても政治家がそれを許さないらしい。
その為、特例として可能な限り
(幸村曰く、そろそろ本家の当主の奥方が学園長になるって言ってたが、それまで俺の精神は保つのだろうか……)
俺はそんな事を考えながら、ホームルームに臨んでいる。
柚希さんに皐月を頼まれた手前で、俺の精神が壊れる事だけは避けたいからな。
「では、ホームルームはおしまい。 早速一限目に
そうしている内にホームルームが終わったようだ。
ただ、一限目は
多分、他の教師を連れて来てくれるのだろう。
皐月にとっても比較されない環境は、安心できるだろう。
ホームルームを終えた俺達は、近くのトイレで用を足して、視聴覚室で教師が来るのを待った。
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