平和な朝、そして登校時に……
翌朝。
俺は目覚ましの音が鳴る前に目を覚ました。
何故か今日は悪夢を見なかったが……起きた瞬間に雪菜が添い寝をしていたことが判明した。
「雪菜……。 そうか、昨日俺と一緒に寝たいと言って……」
思い出した。
昨日の夜、寝る前に雪菜が『お兄ちゃんと一緒に寝たい!』と言って枕を持って俺の部屋に来たのだ。
小学4年生とはいえ、まだ甘えん坊な年頃なので、仕方なく受け入れたのだ。
しかし、怪我の功名というのか、そうでないのか、この時に限っては悪夢を見なかった。
従妹の雪菜の温もりが守ってくれてたのだろう。
安心を与えてくれる人が雪菜以外にもいれば、この悪夢を見る事はないのだろうか?
それとも一過性の物なのだろうか……。
とにかく、そろそろ雪菜を起こそう。
「雪菜、そろそろ起きるぞ」
「んみゅー」
俺に揺すられてようやく目を覚ます雪菜。
まだ、眠気眼なようだが、顔を洗えば完全に目を覚ますだろう。
「先に顔を洗ってくるから、着替えなよ」
「うん」
目をこすりながら、何とか目を覚まそうとする雪菜に、先に顔を洗うと告げて洗面所に向かう。
ゆっくり顔を洗うと着替え終えた雪菜が降りてきた。
「お兄ちゃん、顔を洗い終わった?」
「今終わったぞ」
「お母さんがご飯が出来たって言ってた」
「そうか、じゃあ雪菜も顔を洗うのを待ってから行こうか」
「うん」
先に顔を洗い終えた俺は、雪菜からご飯が出来た事を教えてくれた。
俺は雪菜が顔を洗い終えるのを待ってから、キッチンに向かった。
「おはよう、光輝に雪菜」
「おはよう♪」
「おはよう、叔父さんと叔母さん」
キッチンに行くと、啓介叔父さんと彩那叔母さんが既に食事をしていた。
雪菜と俺も挨拶を交わしてから、朝食を摂る。
「今日の学校はどうなるのかしらね」
「あいつが担任だと、行くのも億劫だんだよなぁ」
「皐月お姉ちゃん、かなり辛そうだったし、私も心配だよ」
「ご両親もかなり激怒していると朝に聞いたよ」
今日も学校に行かなければならないが、あいつが担任であるために、行くのが億劫になる。
俺だけでなく他のクラスメイトも行きたくないとよく愚痴にしている。
特に俺は、下手したらあいつに掴みかかりに行く可能性があるので、抑えれればいいのだが……。
雪菜も皐月を慕っているから、ここ最近の様子を心配している。
歪んだ優生思想が皐月を見下してまで何をしたいのかが理解できない。
「ごちそうさま」
そんな事を考えながら、俺は朝食を食べ終えた。
そろそろ学校に行く時間なので、雪菜の後にトイレを済ませてから家を出る。
「それじゃあ、行ってくるよ」
「いってきまーす」
「いってらっしゃい。 念のために通信制学校の資料請求もやっておくわね」
叔母さんは俺が退学にならざるおえなくなった時に備えて、通信制学校の資料請求をやっておくようだ。
叔父さんは今日は仕事に行くようだからな。
俺と雪菜は、早めの登校なので遅刻はないだろう。
「あ、おはようございますです」
「ん?」
どこかから俺に声を掛けて来たので、その方向に振り向くと……。
「確か、皐月ちゃんと美月ちゃんのクラスメイトの伊波君ですよね?」
「あ、はい……」
(わぁぁ、すっごく若いよぉ)
そこには見た目がかなり若い女性がいたのだ。
雪菜も若そうなお姉さんだと心の中でそう思いながらガン見していた。
その容姿に、ふと幸村から聞いた情報の内容を思い出した。
確か、この人は……。
「もしかして、柚希さんですか? 皐月の母親の……」
「そうなのです。 二人の母親の
やっぱり、皐月と美月の母親の柚希さんだった。
この人は、俺に何か用なのだろうか?
時間には余裕はあるけど、もしかして皐月の件なんだろうか……?
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