双子の片割れとオタクの親友
俺がいる1年A組のクラスメイトである大谷 皐月と大谷 美月は双子の姉妹だが、双子なのに美人である以外は真逆だと言われ、周囲から比較されている。
もちろん、クラスメイトはそんな事しないが、あの糞教師が美月と皐月を比較しては、差別的に接している。
美月は、成績が良くて運動も出来る万能かつ最高と言われ、双子の姉である皐月は勉強も運動も並程度らしい。
その為、皐月は美月にコンプレックスを抱くようになり、美月と距離を取るようになった。
そんな気持ちを無視するかのように、糞教師は皐月を出来の悪い姉と蔑み、先程は暴力も振るおうとした。
それを俺が庇って、糞教師の拳を直撃して気を失ったようだ。
「あの、伊波君……、庇ってくれてありがとう……」
「気にすんな。 俺もあの糞教師には腹が立ってたからな」
「でも、私だけでなく伊波君まで」
「奴が俺を嫌うのなら好都合だ。 元々、俺は奴が嫌いだからな」
申し訳なさそうな表情のまま俯く皐月。
俺が皐月の味方をしたという事で、糞教師に目を付けられたからだろう。
だが、今となっては好都合だ。
俺自身もあの糞教師については、俺のトラウマを呼び起こす要因ともなってる為に嫌っているからだ。
「お邪魔するぞー」
「ん?
「ああ、そうだぞわが友よ!」
皐月と話をしている時に、別の生徒が入って来た。
そいつの名は、
あの楠財閥や小梅崎財閥と手を組んで日本を支えている『踝財閥』の現当主の息子で、クラスの中では影響力を持つが、オタッキーでもある。
幸村が来たと同時に、皐月は頭を下げてから保健室を出た。
「まさか、あの
「全くだよ。 だけど、あいつはどうも楠を憎んでる節も見受けられたぞ」
「ああ、成程な」
皐月と今はいない双子の美月は、大谷家だが本家である楠家と同等の影響力を持つ家柄だ。
というのも、幸村曰く彼女達の母親の柚希さんが元々本家のご令嬢であることが要因だとか。
それでも、あの殖栗はその楠家や大谷家を憎むような様子も見受けられた。
あの歪んだ優性思想ももしかしたら……?
「他のクラスメイトは?」
「さっきの様子を動画に録画したクラスメイトがいてな。 俺に頼んだようだ。 それを楠家と大谷家に送っておいた。 何せあの殖栗は、クラス全員からでなく、上級生にも嫌われてるからな」
どうやら幸村がクラスメイトの一人が録画した内容を楠家と大谷家に送ったらしい。
これで何か対処出来ればいいんだけど。
「何で嫌われてるのに、居直れるんだ?」
「学園長の突然の不在が要因だろうな。 一週間前に突然そうなった」
嫌われ者の歪んだ優性主義者の殖栗が居直っておるのは、どうも学園長の不在が原因らしい。
一週間前に突然担任が今の殖栗に変わったらしく、それに納得がいかないクラスメイトが乗り込んだところ、対応したのが代理で学園長は突如いなくなった事が発覚した。
警察からの捜査も難航しており、どうも奴らが何か仕込んでいるのではという噂もある。
「九重家にも俺の親父が楠家経由で確認を取ったが、何故か九重家は人一人もいなかったらしい」
「マジでか……」
「それで、もうすぐしたら楠家の本家の妻が学園長に就任させると本家の当主が言ってたな。 妨害を跳ね除ける事に集中してるから、就任が遅れたみたいだし」
「なるほどなぁ」
殖栗を始めとした歪んだ優性思想に同調する教師や世間様の妨害に対処していたために、予定よりも遅れたが楠家の当主の妻が学園長に就任するらしい。
しかし、九重家が謎の失踪とは……。
あそこの聞いた話じゃ楠家の分家なんだけど、何でだろうな。
「でだ、お前さんは大丈夫なのか?」
「ああ、あの事か? あまり大丈夫じゃないな」
「お前は今じゃ親戚の家で暮らしているおかげで何とかなってるが、本来の家族から兄弟差別されてきたんだろう? その上でラノベによくある転生前の記憶が蘇ってから、さらに悪化してるだろ」
「前世の悪夢を見たばかりだしな。 ほぼ毎日よく見るよ」
そう。
俺は前世のレオナルド・レリックの記憶が蘇ってからは、只でさえ家族間で兄弟差別されて過ごしてきたのに、前世の家族差別の光景を毎日悪夢として見る羽目になった。
レオナルド・レリックとしての短い生涯を終えた後、神と名乗る女性によってこの世界に転生したのだが、そこでも弟が優秀だった為に俺は両親から迫害を受けて来た。
それを見てキレた親戚が俺を引き取り、今では大事にしてもらってるし、従妹にも慕ってくれているが、この悪夢だけは今の親戚の家族にも内緒にしている。
オタクである幸村にしか、この現状を打ち明けていない。
「とりあえず俺もキレたし、殖栗を追い落とすための仕込みをクラスメイトや上級生の力を借りてやっていく。 皐月さんや美月さんの為にもな」
「早い所頼むぞ。 今の俺だと、どこかで感情を制御できなくなる可能性があるからな」
「分かった。 お前もいつかは素直に話せる相手を見つけろよ」
「善処するさ」
そう言いながら、身体を起こして金沢先生にお礼を告げてから幸村と一緒に保健室を出て行った。
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