転生少年の青春奮闘記~家族に迫害された少年は双子の片割れを救いたい~

イズミント

少年は前世の悪夢を見る

「魔法も剣技も出来ない無能が!」


「本当にね。 弟や妹は優秀なのに、兄のあなたときたら……」


 俺ことレオナルド・レリックは家族から迫害を受けていた。

 いや、家族だけじゃなく、レリック領内のみんなからだ。

 理由は俺が剣や魔法が使えないからだ。

 レリック家は、剣か魔法のどちらかか、その両方を使えないと無能の烙印を押され、その場合は15歳になったら家を追放される。

 なぜなら、レリック領がある国が成人年齢を15歳に設定されているから。


「早く15歳になって欲しいですわ」


「うん。 あんな無能の兄とは暮らしたくないよ」


 妹や弟にまで、俺を蔑む始末。

 言うだけ言って、部屋を出ていく。


 部屋に残ったのは俺一人。

 何で15歳になったら無能の俺を追放するのか?

 それは、成人になった為に家を出たとなり、王家から追及されないからだ。


(15歳になるまで無能と蔑まれるくらいなら、いっそ……)


 14歳での素質チェックで無能判定されてから、食事も部屋も差別された。

 今いる小汚ない部屋に入れられ、食事は乾いたパン程度。

 そして、1日3回はここに来て家族一斉に俺を罵る。

 もう限界だった。


 いっそ追放される前にここで死のう。


 無能判定された俺が唯一できる家族への仕返しが15歳になる前に死ぬことだ。

 幸い、小汚ない部屋の机の中にナイフがあった。

 都合のいいように、刃には毒が塗られている。

 これなら、楽に死ねそうだ。


(生まれ変わったら、もっとマシな家できちんと過ごしたいな……)


 そう心の中で祈りながら、俺は自分の胸をナイフで突き刺した。

 痛みと毒のおかげで、すぐに視界は真っ暗になった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「……うぅ。 また、あの夢か」


 重い瞼が開かれ、視界がハッキリしてくる。

 俺こと伊波いなみ 光輝こうきは夢を見ていた。

 あのの悪夢を。

 俺が前世のレオナルド・レリックの記憶が蘇ったのは二週間前。

 そこから気を失うか、寝ている時に今のような前世の悪夢を見るようになった。


「ここは、保健室か」


 上半身を起こし、見回すと俺は保健室で眠っていた事が判明する。


「あ、気付いたかしら?」


「金沢先生……」


 白いカーテンを開けて入ってきたのは、私立九重ここのえ学園高等学校の保険医の金沢かなざわ はるか先生だった。


「あなた、皐月ちゃんを庇ってあの教師の攻撃を受けたのよ。 必死でクラスメイトが運んでくれたのよ」


 そうだ。

 最近赴任してきたあの糞教師の暴力を皐月から守ろうとして……。

 皐月というのは、俺のクラスメイトの大谷おおたに 皐月さつきの事だ。

 大谷おおたに 美月みつきとは双子の姉妹だ。

 二人とは、この学校に入学した際に知り合った。

 しかし、二人は何かしら距離を置いていたような感じだった。


「あ、気付いたんだ……。 良かったよ」


「皐月?」


 そんな事を考えていたら、金沢先生の後ろから皐月が現れたのだ。

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