第7話

「今日で一ヶ月経ちました。残念ながらディアゴ大佐はアサヒ国で捕まったようです」

 リビングで静かに座る妻は泣き叫ぶことなく、夫の坊主の部下から淡々と報告を受けた。

 そして、こういった、

「いいえ、捕まってはいませんよ。あの人のことです。きっと、死んだと思います」

 隣室で聞いていた娘が母親に飛びつく。

「ママ、パパは! パパは帰ってくるでしょ? もう会えないの?」

「マイカ、パパはね、お星様になったのよ」

「嘘だ! パパはマイカとまた動物園に行くって約束したんだよ! パパー、パパー!」

 息子が涙を堪える部下に告げる。

「ライトさん、俺はアサヒのクズどもを許せない! 今すぐぶっ殺してやる!」

 殺意を剥き出して出て行こうする少年の腕を掴み、壁へと押した。強情な男の目から涙があふれ出た。

「あー、俺だってぶっ殺したいよ! だがな、あいつらは、アサヒ国民はバカな政治家のせいでアホになっただけなんだよ! 俺たちにできることは、人間地獄のようなアサヒ国から優秀な人間を移住させて助けてやることだ! 我が国で暮らす奴らを見ろ、幸せそうだろ。それを邪魔するのが奴らの組織、アキレス隊なんだ! ディアゴさんはアキレス隊に殺されたんだ!」

 息子は元アサヒ国民の移住者と親しい。よくスマートフォンについて話す。

「じゃあ、僕はどうしたらいいですか?」

「スイカになれ! ディアゴさんを超える最強のスイカになれ! アサヒ国から有能な人間を一人残らず奪いとれ! そうすれば、アサヒ国は有能が消えて無能があふれて自滅すると、安堂国防大臣が立てた作戦だ、間違いないんだ!」

 こくりと、息子は生きる道を決める。

「わかりました。父さんを超えるスイカになって、必ずこの手で復讐します! この剣でアキレスどもを斬り飛ばします!」

 父親が残したその刀剣を握りしめる少年が剥き出す殺意は時空を超え、いつかその先にいる殺意を潜ませる青年と戦うだろう。

 はたして、勝つのはどちらの殺意か。

 

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異世界案内人ー異世界に興味ありますか?ー だいふく丸 @daifuku0

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