「同窓会」

scene-1


歓談の時間が経つにつれ、皆すっかり昔の顔になっていた。卒業以来二十年振りに開催された小学校の同窓会。めっちゃ恐かった担任がすっかり老けてたり、

密かに好きだった女子が赤ん坊を抱いてたり‥僕は水割りを片手に、そんな“同窓会あるある”にどっぷり浸っていた。仲間達としばらく話し込んでいて、ふと思い出した。当時クラスの男子を集めて結成‥でも、たった三日で解散してしまった“少年探偵団”のことを。


scene-2


江戸川乱歩が大好きだった。明智小五郎と怪人二十面相の知恵比べに夢中だった。そして素晴らしいアイデアが浮かんだ。

-少年探偵団を作るぞ!- 勿論僕が団長だ。手製の団員証を作りクラスの男子たちに配った。探偵とはなんぞやを得意げに話し、放課後は事件を探して町内を警備して回った。しかし‥そう、小説のような犯罪など現実には起きないのである。


scene-3


町はのんびりと平和だった。怪しい老婆やピエロの格好をした怪人などいるはずもなく、最初は乗り気だった皆もすぐに飽きてしまった。

と言うわけで、少年探偵団は三日で解散‥昔話ついでに「あの時のことを覚えているか?」と仲間達に尋ねてみると、概ね「あーそう言えば」くらいの反応。

だよな、そう納得した僕の肩をポンと叩く男がいた。


scene-4


振り向くと、ん?誰だ? と言うくらい覚えがない奴。

「これ、まだ持ってるよ」彼の手に、あの時僕が作った少年探偵団の団員証が!そうか、思い出ってこういうものかも知れない。意外な場所でひっそりと息づいている‥「じゃあ」そう言って別の輪に戻って行く彼の名を、僕は最後まで思い出せなかった。



end

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る